梅干の種

 朝に午後に多可町の不動産屋が来ると電話があった。 もう一人丹波の不動産屋も一緒だった。 値段の話になり丹波の不動産屋は、決して高くはないが、少しは値引きの幅がないと最後に決まりにくいです、と言う話になった。 掛け値はしていないし、この値からの値引きは考えていない、それに加西の不動産屋はこの値を言ってあるのでもう売りに出しているだろう、と答える。
 でも関西の人は値引きがあるとないのでは・・・と言いながら不動産屋は困った顔をしていたが、この物件は掛け値はないので値引きはないですよと最初に言っておいて欲しい、と答えてそこに落ち着く。


 昨日姫路の家へ行ったのだが、前の住人のお爺さんは荷物を全部置いていっていた。 まさに本当に全部の全部である。
 干し物竿に干してある靴下やパンツまでそのまま下がっていた。 電源の元を切られていたが冷蔵庫の中にはラッキョだとか、干物の魚だとか、佃煮などが残っていたし、お盆の上には最後に食べただろう茶碗も、箸も、湯飲みも、梅干の種まで何もかも全部そのまま残されていた。
 ケアーハウスへ身体一つで移ったのだからそれもありだろう・・・とは予想していたが、その通りなあまりにもリアルな状態を見て、今更ながらあきれるというより苦笑いしてしまった。
 だが、さすがに顔見知りの人のそんな状態の後始末を自分がするのは何となく腹立たしく、今日、家財道具一式の廃棄処分も引き受けるという、その手の引越し屋に電話して聴いてみた。 一般家庭の場合分量にもよるが、10万から20万円程度が多いという話だった。 決して安くない値である。 調べてみるとクリーンセンターは飾磨の海沿いにあり、そこの家からかなり近いし、軽トラで運ぶことにした。


 それよりも大きな問題があった。 家の南西角付近がかなり沈み込んでいるのだ。 そこは内部でいえば座敷の床の間がある箇所で、床柱を真ん中にして落とし掛けや仏間の鴨居がへの字形に下がっている。 前に来た時は座敷はお爺さんが寝ている部屋だというので、遠慮してよく見なかったので気が付かなかったが、おそらく床下にシロアリが入っているだろうと思う。 これは大事になりそうである。
 最初のの綾部の家でも床の間付近が雨漏りしていて結局そこの下屋根部分や柱を全部取り壊して屋根を新しくしたが、それに匹敵する仕事になりそうである。 この家の西南角には大きなイブキの木があって日が当たらなくて湿気ているのが禍してるのだと思う。 その大きなイブキの木を切るにもレッカーで枝を吊りながら切るという面倒な仕事になるだろうと見ている。 どうやら縁の下全体を見て、場合によってはこの家の改修を諦めて、全部解体して更地にして売りに出すことも考えに入れる必要がありそうだ。 そうでなければ曳き屋を入れて、家を持ち上げて布基礎をしてそこへ降ろすという大改修になるが、その場合お金が掛かりすぎるということになってしまう。 その他にも土間部分の梁が土間から2メートルあまりと低くて床張りは難しい、和室の天井が低いなどなどいろいろ問題がある家だが、いろいろ見ているとゾクゾクしてくるほど愛着がわく悪女のような家でもある。 
  

 今日の仕事


 余った材木を部落のゲートボール場へ運ぶ。 冬場に焚き火をする時の焚き付けに使うためだ。 近くにこんなところがあって本当に助かる。