都々逸をうなるオジサン

 リビングの東側半分の外壁を取り壊す。 ここは一間だけだが一尺五寸ほど道路側へ張り出している。 昔ここの家は煙草の小売をしていて、その当時この張り出した部分に煙草を売る窓口があったらしい。
 壁を壊してみたが、張り出しの片側は柱と同じ位置に三寸の出柱があるのだが、もう片側は本柱からずれた位置に出柱が立っている。 どうしてわざわざこんなおかしなことをしたのか分からない?
 仕方ないからその出柱を外して、柱と同じ位置(ほんの六寸ほど広がるのだが)に立てることにした。 庭に転がっていた小さな基礎をモルタルで堅めて、そこに柱の下部を切って立て直す。 しかし仕事はそれだけでは終わらず、垂木掛けもその分長くして、垂木も一本無理やり差し込んでおく。 またすでに作ってあった床も出その分広がるので、余っていた床材で継ぎ足して広げる。 
 そこまではよいのだが、注文してあった窓サッシのサイズが出窓の柱から柱丁度の大きさだったが、寸足らずになってしまう。 まあサッシのほうが大きくて入らないよりよいのだが、木材で両側を塞いでサッシ窓をとりあえず入れて仮留めしたところで今日の仕事は終わった。
 だが、サッシの下部や出窓の両横は壁がない状態で外部とツウツウ状態である。 リビングのすぐ横がキッチンで夕食はキッチンで食べているが寒いこと寒いこと。 寒いので鍋をしたので食べているうちに身体は暖まったが、手足が冷たくなってくる。 まあこの時期に夜外にテーブルを出して食事をしているような状態だから、寒いのは当たり前なのだが・・・


 これまでは家の内部で戸を閉め切ってこそこそ仕事をしていたのだが、ここへ来てようやく外壁を壊して外からでも内部の状態が見えるようになった。 近所の人が犬の散歩の途中、立ち止まって覗いたいたり、わざわざ興味本位で覗きに来る老人もいたりする。 この地区は全体におとなしい人が多いようで、概して興味深げに見ていくのだが、何だかんだと向うから声を掛けてくる人はすくない。 向うが声を掛けてこないかぎり、オフも何だかんだとこちらから言うこともしない。 だが、どこへ行っても必ず少しはおかしな人はいるもので、毎日なんだか訳の分からないような都々逸のような唄をうなって通りがかるオジサンがいる。 このオジサンだけは例外で通りがかりに、みんなメンデマウ(壊すの意味)のか?と訊いてくる。 そんなことはないよ、と答えるのだが、また次の日もまた、みんなメンデマウのか?と同じように訊いてくる。 そんなことないよ、とオフが答えると、それを聞いて満足したように、また都々逸のような唄をうなりながら行ってしまう。 オフが作業場などの外にいるかぎり、毎回必ずそれが続いている。
 

 今日の仕事

 
 リビングの東側半分の壁を壊し、出窓の外柱をずらし、サッシ窓を入れる。