寒い

 この地は寒い。 前に住んでいた八千代も寒かったが、加西市は盆地地形で寒暖の差が大きいからだろうと思う。 ここのところ加西市の最低気温が1℃の日が三日も続いた。 この地区はその加西市の北にあたるが、山際にあって少し標高も高くなっていてとくに夜中は深々と冷える。 今日も床をまくって縁の下が室内から丸見え状態だから、冷え込みそうだ。 今は廃れてしまったらしいが昔の八千代の名産は寒天造りだったという。 寒天といえば冬期間連日零度以下になる寒い長野県あたりが名産のはずである。 でもこれからの時期の冬でも朝起きると朝日が拝める日が多い。 これは朝から仕事をする者にとってはとてもありがたいことである。 わざわざ自分に気合いを掛けなくても、寒くても自然に気持ちが仕事モードに切り替わるからだ。


 ここの家は昭和それも戦後の建物である。 登記簿は昭和三十八年に登記されている。 付属建物は昭和40年に登記され、全体を56年に変更、改築されている。 最初からでも45年ほど、改築してからは30年すら経過していないことになる。 山の家を含めこれまでオフが手掛けた建物の中では一番新しい。  主な建物である和室部分などは石置きの基礎だが、付属建物などは周辺部だけだが布基礎の上に土台を伏せてある。 おかげで建物自体の狂いは少なくたいへん安定していると思う。 オフは日本建築、とくに古民家といわれる建物の弱点は石置きの基礎にあると思っている。 それぞれ独立した石置きの基礎は長年の内にそれぞれ個別に沈み込んだりして、どうしても家が不安定になって家にガタが来ている事が多い。
 オフの基準からいえば、ここの家のような新しい家は本来ならオフが手掛けたい建物ではないが、仕事をする上からは狂いも少なく仕事がきわめて楽チンである。 ここの家はたまたまやりたい物件がなかった、ということもあって手掛けることにしたが、なるべく仕事を簡単に済ませて次に移りたいと思って掛かった。 でもやり始めるとあれもやりたいこれもやりたい次々に仕事が出て来るものである。 そこで制限を設ける意味もあって、どうあろうと二階部分は今回一切さわらないことに決めた。


 仕事をお金儲けを中心に考えれば、どちらかと言えばこの手の家をリフォームしている方が楽だし、綺麗に仕上がるし、間違いなくお金は儲かるだろうと思う。 だが、この先どれだけ頑張ってもオフの年を考えれば、あと数軒の家を手掛けることしか出来ない。 だったら、これはやりたいぞ〜、と思える家だけに絞って掛かりたいのだ。 その意味でも少なくとも100年は経過していると思われる姫路の家を早々に選んだのである。 その姫路の家は競売物件であるため二度ばかり外部から見たのと、裁判所に用意されていた内部の写真を10枚ほど見ただけである。 もちろんそれだけでは柱や梁の状態、床の傾き具合、それに一番知りたい縁の下の土台などの腐り具合など分かりようがない。
 まだ決定ではないが、その姫路の家の決済の書類と振込用紙が来週初めに送られて来ると思う。 それを済ませれば建物内部に入って、つぶさに柱や床の傾きから天井裏部分を検分することが出来る。 今手掛けているこの家のことより、そちらのことを考えるだけでワクワクする。
 内部を見て、その結果、やれやれこれはとんでもない家を掴んでしまったなぁ・・・と悔やむことになるやも知れないのだが・・・


 今日の仕事


 押入れの床の下地をして床を張り、前の押入れの床板をまくる。 材木屋で桧の三寸五分角の大引き四本を縦に引き割って貰いそれを買ってくる。