風呂の掃除

 リビングの下屋の横に出ている野地板が焦げて黒くなっている。 以前の持ち主が横の小屋でボヤを出した時に類焼した箇所である。 その小屋は昨年仕事始めに取り壊して、その跡は今はベランダになっている。 焼き板程度の焦げ付きならそのままにして置くのだが、さわるとボロボロと落ちてくる。 その下からさらにもう一枚野地板をあてて補修することにした。
 その後、風呂場の壁のタイルや床のタイル、そして風呂桶を専用の洗剤を吹き付けてタワシで洗う。 目地の部分が黒くなっているのは完全にキレイにならない。 カビが侵入していて奥まではびこっているのだ。 カビ落とし洗剤で何回かこすっておればいずれ落ちるだろうが、手っ取り早く明日にでも白ペンキを塗って半渇き状態でタイル面を拭き取るつもりだ。 キッチンのタイルも同じようにしてキレイにしなければと思っている。


 近所の人の話では、ここの家の奥さんは掃除が大嫌いな人だったらしい。 たとえば換気扇などは油汚れがひどくて動かす気にならないほどメチャクチャに汚れていた。 とにかく出歩くことが好きで、ハウスキーピングはそこのけでお稽古事だと言っていつも車で何処かへ出掛けて行っていたらしい。 前はわざわざ速達で通信販売のカタログなどが奥さん名宛てで送られて来ていたが、郵便局の配達の人に、この名前の人はここにはいないよ、と言うとそれ以来届かなくなった。
 昨日も玄関で、こんにちわ、という男の気持ち悪い声がするので出てみたら、マルハチです、奥さんはいらっしゃいますか? とスベスベした顔の色白の男が甘ったるい声を出している。 訊いている前の持ち主の名前を出すと、そうです、そうです、奥さんは・・・、とニカニカ笑いながら言う。 
 夜逃げしたよ、とぶっきらぼうに言うと、気持ち悪い男は、アッ、と言ったきりその後の言葉が続かない。 そして黙って玄関の戸を閉めて帰っていった。
 夜逃げした、というのはオフの口から出まかせだが、ここの家の持ち主が不渡りを二度出して倒産し、差し押さえを食った後、奥さんは何処かへ行ってしまったらしい。 旦那のほうは、近所に小さなボロ家を借りて新聞配達などをして何とか暮らしていて、先日も水道の浄化槽の清掃に出てきていた。  奥さんのほうは最初は離縁して四国の田舎に帰った、と訊いていたが、向かいのオッサンの話では、帰れるわけがないだろう、親元からもいろいろとお金を融資してもらっていたはずだから・・・という話である。 今日も風呂を掃除した後洗い流してみると、思っていたよりもきれいになった。 と言うことはけっこう汚かったここの風呂も、そんなに古い昔のものではないのだろう。


 今日の仕事


 だいたいのリフォーム仕事が終わった。 下屋の横に出ている野地板の下にもう一枚野地板を当てて補修する。 風呂場の壁のタイルや床のタイル、そして風呂桶を専用の洗剤を吹き付けてタワシで洗う。