老いてますます・・・

 老いてますます盛ん、という言い方がある。 この言い方の意味を嫁さんはつい最近まで少し間違って理解していた。 つまり、お年の割りに何時までも元気ですねぇ、という風に理解していたようだ。 もちろん大筋では間違いとは言えないが、これは本来、あちらのほうが、お歳の割りにお盛んですねぇ、うらやましいなぁ、という意味で使われているのである。 
 看護婦をしていた嫁さんは昔、患者さんに、老いてますます盛んですねぇ・・・と言ったことがあるかどうか知らないが、そう謂われた時に謂われた当人は何と答えるのだろう・・・少なくともそう謂われて怒り出す人はいないと思うが・・・面食らいながら、まあまあというところですねェ、とテレながら答えたりするのだろうか・・・。
 そもそもあちらの方のことは、あまりおおぴらにされないことなので、どうなのか?こうなのか?推察するしかないのだが、たまたま人とそのことに触れても、それをそのまま鵜呑みにする訳にもいかないような事柄である。
 
 あちらのことに関しては、いってみれば趣味みたいなものだ、という風にオフは考えるようになった。 つまり、魚釣りが好きだとか、編み物が好きだとか、ジョギングが趣味だとか・・・・という事とたいした違いはないない、というふうに思っている。
 たまたま夫婦揃ってそういうことが好きならば、お盛んになるだろうし、そうでなければ趣味が合わないように、自然ことに及ぶことが少なくなってしまうだろう。 また、お互いにさほど好きでもないもの同士ならば、もう卒業したわ、と宣言することになる、そんな程度のことだろうと思う。
 
 趣味といえば、昔は何をおいても<魚釣り>であった。 二十数年間休みの日にはほぼ海や川へ行っていただけでなく、仕事が終わってから夜中に行って寝ないで一晩中釣りをしていたこともある。 雨風が強くてとうてい釣りにならない日でも、海を見るという名目で釣り場へ行くことも多々あった。 たとえ釣りは出来なくても、釣り場を見てくるだけで気持ちが落ち着いたものである。 それが今は、たまにですら魚釣りに行きたいと思わなくなった。 釣りに行きたくなくなったのは、前の仕事をやめてから徐々であるが、行くたびに面白みが薄れていった。 おそらくオフにとって魚釣りは前の仕事とワンセットになっている範囲での趣味だったのだろうと思っている。 

 
 今日の仕事


 朝一番に天井板に二度目の塗装をする。 板が乾けばすぐにでも天井張りに進みたいのだが・・・サテどうしたものか。 部屋の西側の一番上部にフィックス窓がある。 おそらく明り取りのため大工さんが手作りした古い木枠の窓である。 ガラスも昔のもので3ミリほどと薄いものだが、この窓を残すことにした。 ところが新しい天井面がその窓の中間ぐらいに来るのだ。 面倒だがそこの部分だけ四角い枠にして天井面を上げるしか手がない。 垂木を切ってその部分の枠をつくる仕事を始めた。 さほど重みのかかる箇所ではないので、枠にホゾを組むことはないが、突きつけよりも合いジャクリするほうが仕事はしやすいのである。 やりかけると、仕切りに入れる板を挟む溝まで枠に掘ったりした。

 天井板が乾いてきたのでそろそろ張るかと思って板を天井枠の上に置いてみたら、枠に板を下から張りつけていくのはまあまあ面倒なので、枠の上に乗せてそのまま上からビスで止めるのが楽だなぁ考え始めた。 それに窓のため枠を作った部分はその分高いから最後の一枚のビス止めも何とかなりそうだし・・・
 そうなると枠の下場を揃えていたのだが、今度は上場を揃えなくてはならない。 ビスを外して枠の切り込みの深さを変えたりして急遽上場を揃えた。 ところが枠の上から張って行く場合、真壁なので枠は柱に当たっているので、壁面と枠との間に隙間が出来ることになる。 柱の部分だけ枠を切り込むという手があるが、そうすると枠が少し大きくなり横の枠の寸法が狂ってくる。 それでは隙間に他の材を入れて埋めればよいかと考えたが、なんとなく不細工なものになる。 途中までやりかけてしまった仕事は面倒でも最初の考えにそってやっるべきなのだ。
 考えが定まらず、おかげで仕事がいっこうに進まない一日だった。