日当二万円

 向かいの家のオッサンがここ二、三日顔を出さない。 オッサンの軽トラがあるから家に居るのは確かだが・・・。
 一昨日だったか、ワシは仕事を人に紹介ばかりしているが、これまで仕事の話を持ってくるヤツは一人もいない、と言っていた。
 さらに、ここへ来てる左官屋もワシが声を掛けてやったのに、お礼におかしな卵を持ってきただけだ、とブツブツ言っていたので、娑婆はそんなモンだよ、まだ卵を持ってきただけマシさ、と答えたが、それでも不服そうで、きょうび左官屋なんかは碌に仕事もないのだから、こんな良い仕事を紹介したんだから一割ぐらい持って来てもよさそうなものだ、と息巻いていたが、それ以来ぷっつりと来なくなった。 
 彼は最近まで、シルバーからの仕事を貰って庭師仕事をしていたのだが、もう二度とシルバーの安い仕事なんかはしないぞ、と言っていた。 何があったか知らないが・・・それにしてももう年が60代半ばを過ぎているのだから、たとえ道具は自分持ちで一日一万円の日当でもあり難い方だと思うのだが・・・ 
 


 昨日来ていた電気屋兼配管屋、それに先日柱のジャッキアップに来たてくれた大工さんは、これまでの請求書では労賃を一日二万円書いてきている。 オフは職人が二万円取るのは高いとは思わない。 ただし朝八時から五時まできっちり働くならば、だが・・・・電気屋兼配管屋はたいてい9時半頃にしか顔を見せない。 それに時々居なくなる。 途中の休憩を取っているつもりだろうが、配管屋や電気屋仕事程度の仕事で休憩は必要ない、とオフは思う。 午前と午後休憩を取るなら、その分5時以降にサービス残業するべきと思う。
 ただし仕事の内容によってはかなり疲れる仕事の場合、休憩を取らないとかえって仕事の能率が上がらない、そんな場合は随時休憩を取ることはとても大切なことである。 電気屋兼配管屋の人たちは朝現場に入る前に必要な部品や道具を仕入れたり手配する手間があるから少し遅れる、と言うかもしれない。 それにしてもそんなことに1時間半も掛かる訳がない。
 大工さんや左官屋はキチンと8時に来て仕事を始めている。 これには二万円を払うのは決して惜しくない。
 左官仕事は気持ちを張り詰めるので、適時休憩は必要だと思うが、この左官屋はオフと一緒で一人仕事を好み、めったに休憩は取らない、若い時からこの仕事をしているので続けて仕事をしてもさほど苦にならないと言う。。 先日の大工さんも休憩は取らなかった上に6時までみっちり仕事をしていた。 大工も、一人で仕事をしているのが好きだ、と言っている。
 オフは今日二階の天井を落とす仕事をした。 その前に天井裏の掃除をしなければメチャメチャ汚い。 掃き掃除でゴミやホコリがバケツ二杯ほど出た。 それでもこんな汚い仕事だが、古い家の改装が好きでたまらない、だから汚くて人が嫌がる仕事だが、さほど苦にならない。


 今日の仕事


 今日は二階の天井を落とす仕事をする。
 まずこの50年ほどの間に天井裏に積もったゴミや埃を掃き掃除する。 吊り天井なので当然ながら天井の上には乗れないので、梁の上に乗っての仕事となる。 梁の上には屋根垂木を支えている棟木や母屋を受ける柄が立っているが、その柄同士を繫いでいるヌキが四分ほどの厚みしかない。 当地は雪の降らない地方だからこの程度でよいのかもしれないがなんとなく心もとない気がする。 ゴミといってもほとんどが屋根瓦の下に引いてある赤土が長年の間に落ちたものである。 その後業務用の掃除機を持って上がり細かいゴミも吸い取っておく。 ゴミといっても先の綾部の古民家のことを思えばここの天井裏はたいしたことはない。 綾部の場合は萱葺きだったので萱クズと、昔は囲炉裏で火を焚いていたので煤がすごかった。

 天井裏の掃除は午前中で終わり。 午後からは昔の碍子配線を点検して天井照明を配線を外しておく。 次に棹縁天井の吊り木を順次外しておいて、下へ降りてチェーンソウで縁から一尺ほど逃げたところで天井板を切り込んでいく。 二回に分けて四角く切って天井を落とす。 さらに窓枠から出せる程度の大きさに切り分け、今日仕事に来ていた左官屋に屋根に上がってもらって窓から外へ出す。 その後まわりの板や棹棒を取り外す。 二階の真ん中にある八畳分の天井を落としたことになる。 その後箒で掃いて、さらに掃除機をかける。