暗いアンパンマン

 月曜日メールを出しておいた不動産屋から連絡はない。 当初の予定通り、さらに二軒ほど声を掛けるつもりで、今朝京都府の業者を絞り込んだ。 しかし、その内一軒は水曜日で今日は休業。 もう一軒も休みだったが、たまたま誰かいて電話がつながるが、現物を見に行くのはどんなに早くても来週半ば以降になります、という返事だった。 
 今月は後三日しかないので無理だろうが、後一週間ほどで片付けから残りの仕事まで全部終わらせようと思っている。 それが終わったら、不動産屋と話をつけて見学に来るお客の対応は全部不動産屋に任せることにして、道具などを次の八千代へ運ぼうかなと思っている。
 まだまだ、やり足りないなぁと思うところは幾つかあるが、それをやっていてはキリがない。 一年たった今が切り上げ時だろう。
 不動産屋はそれは駄目だというかもしれないが、障子の張替えや襖やタタミなどの取替えは買う人にお任せするつもりである。 


 先日出席した蛍雪会で、見慣れない女の人がいたが、名前を言われても誰だかわからなかった。
 旧姓を訊いてようやくわかった。 向うもオフが誰だか分からないようだったので、名前を名乗ったら相手もそれでようやく分かったらしい。 同じテーブルだが、丸いテーブルの向こう側だったこともありあまり話し合えなかったが、オフが高校時代は暗い顔をしていたね、と言ったら、その人は少し困った顔をしていたので、それ以上話を続けなかった。 
 その内にその人と横の人と話している会話が耳に入ってきた。 彼女は、私は結婚が遅かったので皆さんのように子育てが完全に終わってないのよ、と言っていた。 また、私、今は保育園の保母さんをしているのよ・・・子供が可愛くて可愛くて、毎日子供達から元気をもらっています、と言っているのも聞こえてきた。
 じつはこの人は高校時代のオフにとって、ある意味でとても重要な人であった。 かと言ってひそかに思いを寄せていたとか・・・そんなのではない。  
 ある日たまたま授業中にこの人の横顔を見て、しみじみこう思ったのだ。 この人は何が楽しくてこんな学校に来ているんだろう・・・と。
 そんなふうに思うくらいだから、その時の彼女の顔は、この世にこんな暗い顔があるのかと思えるほど・・・暗い顔をしているように見えたのだった。
 当時も今も彼女は標準以上にお太りになっていて、顔が誰に似ているかと言われれば、思いつくのはアンパンマンと答えたくなるような (ごめんなさい)お顔だと言えばよいようなだが、さすがにこれは少し失礼かなぁ・・・
 しかし、その時の彼女の顔がその後もずっとオフの心に残り、ことあるごとに彼女の顔を思い浮かべていた。 言ってみれば高校時代のオフの言動や行動の、具体的に言えば学校や先生への反抗の原点が彼女の顔だったと言ってもよいだろう。


  学校、とくに義務教育から一段上がった高校では、入学したその日から、お前たちは当地方では選りすぐった人材で、これから三年間一心に勉学に励め! 当校では今年の卒業生の中には東大へ現役で入った生徒がいる、そういう先輩達が頑張って築き上げはぐくまれた当校の輝かしい伝統や名誉を汚さないよう、名に恥じないよう頑張れ!  ほぼ三年間に渡りこのように言われ続けた。


 そのころのオフの心の中での葛藤は、簡単に言い換えればアリとキリギリスの話に集約されると思う。
 アリとして、やりたいことは我慢して将来のために今の苦労に耐えるか、キリギリスとして今まさにやりたいことをやるのか・・・ということである。
 今この年になって、どちらの生き方が良かったのか、と問われても・・・もちろん訓話のようにアリの生き方が良かったとは言えないが、キリギリスが良かったかとも言えず、相変わらず答えようがないのである。 もちろん傍目からは分からないことであるが、世間的な常識から見て、あんなに頑張っていたのにその後がなぁ・・・と言う人もいれば逆に、あんなちゃらんぽらんなアイツがなぁ・・・という例もある。 
 まだ若く人生経験が少ないからといって、その当時そのような知恵にまったく無知であったか言えば、そうではなかったはずである。 いつの時代でもまわりの大人達の世界の嘘と本当を、子供たちは意外と良く知っているものなのである。
 そのような日々の中で、オフは暗いアンパンマンの顔いつも思い浮かべていたのであるが、もちろんそんなオフの顔もアンパンマンに負けず劣らず暗い顔をしていたはずである。
 このような環境の中でオフのような天邪鬼な人間は決して、そうですか頑張ります、とはならないで、このヤロウ!となるだけなのである。(まとまっていないので、この続きが書けるかどうか?)


 今日の仕事


 クローゼットの横の二枚の板を外して、代わりに集成材の一枚板を当てる。 個人的には無垢の板を集成材に取り替えるのは意に反するのだが・・・まあ、致し方ない。
 ホームセンターへ追加で砂を買いに行って来て、モルタルを練る。 昨日の続きでブロックと土壁の隙間やブロック同士の隙間にモルタルを流し込む。 砂二袋で足りると思ったが隙間をこじればこじるほどモルタルがドンドン入り、最後にほんの少しだが足りなくなってしまった。
 土蔵の窓枠は分厚い土壁を破って入れたが、窓枠のまわりに土壁の断面がむき出しになっている。 その土壁の内側に板を入れてさらにその板と窓枠の間に木材を入れる、言ってみれば窓枠を二重にするという仕事をした。 土蔵の窓は一階に二箇所、二階に一箇所あるが、二階の枠は明日の仕事となる。