ある同級生

 ようやく台風一過のさわやかな秋晴れである。
 まだ同窓会の気分が残っている。 というのも昨夜同窓生の一人が書いた文章を少し読んでとても嫌な気分になり、夜中じゅう寝苦しかった。
 その文章というのは、彼が次の市会議員選挙に立候補するために書かれた文章で、かなり長く内容は外交、憲法、経済と三つの部分に別れて書かれている。 タカが地方の市会議員選挙に立候補するのにどうして外交や憲法、経済についての長い見解が必要なのか分からないが、おそらくそこらの市会議員候補とは違って、俺は政治全般に渡っての大きな見解を持って立候補するんだ、と言いたいからなのだろう。

 しかし、オフは政治家というのは所詮口利き屋でしかない、と考えている。 おそらく実際には大方の人にとって政治家というのはそのような者でしかないのだ。 オフもこれまでたった一度だけだったが、政治家の秘書に口利きを頼んだことがある・・・が結果はナシのつぶてだったが・・・。

 この同級生とはオフは一時期親しかったこともあり、あまり気がすすまなっかったが昨夜目を通したというわけである。 まあ、内容は最近の産経新聞の社説などに掲載されているだろうと思われる、かなり右よりの政治見解の焼き直しである。 もとはと言えばおとなしい性格で、付き合っていたころは右翼的な言動はなかったと思うが・・・オフと付き合いがなくなって20年余の間に変わったのだろう。 そのあたりのところをおおよそ推察できないわけではない。 一度彼の奥さんが家を出てしまい、オフと前の妻とが間に入り、二人のよりを戻そうと何度か話し合いをしたことがあったが・・・その時以来付き合いは急に疎遠になっていた。 結局奥さんは両親と離れて近所の家を借りて住むようになった彼のところへ戻ったのだが、完全に家庭内別居生活になってしまった。 二人の子供との関係もギクシャクしていたと思う。 彼はクリスチャンで、というよりむしろ聖書に戻れ、聖書に書いてあることがすべて神の言葉である、と主張する原理主義クリスチャンである。 離婚も聖書では認められていないから認められない、の一点張りであった。 その後二人は離婚はしなかったが、相変わらず奥さんの心はいまだに閉ざされたままらしい。 彼はそのような頑固なところがあるが、同時に現実が見えないし、おぼっちゃんである。 オフは奥さんがそんな彼の要求する、よき妻であり、時には母でもあり、恋人でもあるたいへんな妻になるのが嫌になったのが離婚の原因だと思っているのだが・・・・。 


 最近あちらこちらで「国を守る」とか「国を愛する」といった言い方が声高に叫ばれている。 
 具体的に信用できる者が身近にいない・・・からこそ、抽象的な「国」を愛したり守ったりするという考えに取り憑かれることで、ようやく自分の居場所を見出すことができるのだろう、と思えるのである。 そこには、「国」よりも、まず自分の友だちや家族や恋人のほうが大切だと思う人々への、憎悪も含まれているような気がする。
 そのような非常に攻撃的で排他的な欲望を、いわゆる愛国者達は持っているように思えるのである。 つまり、何者をも愛することができない人間こそが、ファナティックに「愛国」を唱えている訳である。 彼もまたそのようなものにシンクロし、議員になることで尊敬されてまわりとの破綻した関係を修復したいのだろうが、たとえ議員になっても、ますます関係はおかしなところに向かうだけだろう。
 現在の彼に哀れみみたいなものを感じるが、このままでは行くところまで行くしかないのだろう。 やれやれ・・・

 
 今日の仕事


 当たり前のことだが階段の踏み板を側板に固定しなければならない。 上から固定するのが一番安定するのだが、たとえ隠し釘打ちにしてもどことなく野暮ったい。 壁側には床から立ち上げた材に乗っているわけだが、せいぜい一寸(3センチ)ほど掛かっているだけである。 それだけでも間違いなく掛かっていれば問題ないが気分的になんとなく不安定そうである。 横から踏み板の大きさの垂木の切れ端をビスで取り付けて、さらに下からビスを打ち踏み板に固定しようとした。 しかし、いざやってみると二寸の垂木が太すぎるのか、これもなんとなく野暮ったく見える。 結局L字型金具を使うことにした。 この方法が一番しっかりと踏み板を固定して上り下りの際にぎしぎし鳴らないと思う。 が、金具が横から見えるのも・・・なぁ、なのであるが・・・

 階段仕事は金具さえ揃えばいつでも出来る。 外は秋晴れのさわやかな天気であり、この天気は明日明後日も続く。 土蔵の周りにぐるりとブロックを並べてモルタルで固定する。 さらにブロックと土壁との間に生コンを流し込んで現在えぐれて来ている土壁の隙間から雨水が滲み込まないようにする作業に入る。 まず、土蔵の周りの犬走りにいろいろ置かれている物を運び出し、半分壊れている北側の腰壁も撤去して壊す。 問題は窓を作るため破って倒れたままの土壁だが、別の場所へ移動する。 腐っていた床や垂木、大引きが積まれていたがこれも移動する。 さわやかな秋晴れといっても日中は30度近くまで気温が上がる、とくに土壁移動の作業はきつく、最後は汗びっしょりになる。
  午後からは犬走りの上を水を流して洗い、ブロックを並べてモルタルを練る。 入り口と反対側の東側はまだ何とか腰板が持ちそうなので、この部分にブロックを並べるのは急遽取り止める。 モルタルを敷いてその上にブロックを並べていくが、あらかじめ糸を張って作業をやらなかったのでブロックはプロ仕事のようにきっちりと並ばなかった。
 明日にはモルタルが固り、隙間に練った生コンを入れていく作業になる。 それにしても今日は久しぶりに汗をかいて草臥れた。