仰げば尊し・・・

 台風が去ったが、北の高気圧に覆われ晴天とはならなかった。 明日に持ち越した感じである。
 仕事をしていて金木犀の匂いがかすかに感じれた。 秋雨前線もどこかえ消えてしまい秋のお彼岸ももうすぐで、これから季節は秋本番となる。

 なんとなく同窓会に出た気分がまだ尾を引いている。
 同窓会には三年の時に担任だった四人の先生の内一人の先生だけが出席された。 
 オフの二年、三年の時の担任だった先生である。 もともと声の大きい人ではなかったが、ますますかん高くて小さな声でボソボソしゃべるようになられたし、おまけに話がとりとめもなく長くなった。 凡庸な先生だが、オフはこの先生は高校時代の先生の中では少しは好きなほうであった。
 会のお開きの時に酔っ払ったその先生が、再び何かよく分からないことをボソボソしゃべった後で俳句が書かれた色紙を五枚取り出した。
 それを出席者の五人に配りそれぞれを読み上げさせたのだが、その一句目を誰かが読み上げた直後、オフは思わず、駄作だなぁ、と大きな声で言ってしまった。 しまった!と思ったが取り返しが付かない・・・その次の句を訊いた後、まあ、これは少しましだなぁ、と思い今度も大きな声でそのように言った。 三番目の句は、出だしが、恥多し・・・うんぬん、という句で、ウンこれはまあまあの作だなぁと言った。 三番目の句が書いてある色紙はオフの手にあって、それには、衛星の・・・で始まって、小さな花だったか、小さな菊、だったかで終わっている句だったが、これも駄目だと思い、そのように言った。
 最後の作も凡作だったので、そう言った。 
 最後に先生も昨年だったか国から勲章を貰ったらしいが、もっと本音の部分で句を作りなさい、などと偉そうなことを言ってしまった。
 なんとか笑いをとる座興となったが、まあ、何とかましであると思えた句があって、本当に良かったなぁ・・・であった。
 国語の先生的に言えば、衛星の句も、出だしで背景に真っ黒で途方もなく大きな宇宙が背後に控えていて、最後は地上の小さな花で終わっている句で、その落差と対比に妙があるなどと言うのかもしれないが、こんな句は少しお勉強が出来るようなそこいらの秀才なら誰でも頭で作るような並みの作である。 その後、手元にあったその色紙も誰かに手渡してしまった。

 先生は今年76歳になられたというが、翌朝のバイキング式の朝食の時、誰よりも沢山のおかずを皿に載せて来て食べていた。 皿の上には脂身のたっぷりあるベーコンもあったが、最後はそれも全部平らげていたのだが・・・これはまだまだ生きるぞ!なのか、そんな食事をしていて大丈夫?なのか・・・
 
 
 今日の仕事


 引き続き土蔵の階段作り。
 下三段の階段の一番下と三番目は一枚の長方形の板を対角線で斜めに切って直角三角形にしたものを使う。
 問題は二段目の階段で、基本的には長方形の材をひし形に切り取って使う。 だが、ここで作る三段の階段が入る空間はは上から見ると正方形ではないし、正確にはコーナーの壁面も直角ではないから各隅が直角の長方形でもない。 壁が傾いているからなのだが、いびつな長方形なのである。 そんなところで計算上で切り墨が打てるわけがない。 すべて現場合わせで寸法を測りながら作っていくしかないという、まことに面倒な仕事なのである。 さらに厄介なことに、一階の床もそうだが二階の床も傾いている。 両者とも同じ角度で傾いているならばまだ良いのだが、とくに二階の床の傾きがひどい。 そんな状態で両者をつなぐ階段を作るのだからまさに、やれやれな仕事なのである。
 基本的には水平を基準に取ったが、なんと一番上の10段目から二階の床に上がる蹴上がりはものの見事に傾いている。 そこを配慮するなら、少しずつわからない程度に階段を傾かせて修正していく手もあるのだが、土蔵の階段であるのでそこまでのことはしなかった。
 細かい調整仕事はまだまだあるが、まあ夕方までには何とか階段らしきものが出来た。