昔の話 3

 結局伏木で作った借金は、ばあちゃんの頑張りで飲み屋が流行り、その後その店を良い値で売ったこともあって、約三年半ほどの短い期間でなくなったらしい。 その頃オフは学校でも暗い顔をしていたと思うがいつの間に悪いグループに、そのボスは家の金を盗み出しモデルガンなどを沢山買っていたが、近づいて彼らとコソコソと遊ぶようになっていた。 
 祖父は仕事は真面目にやる人だったが商才はなかったと思うし、ばくち打ちであったがどちらかと言えば博才もなかったようだ。 口では自慢話や大きなことを言うのだが、肝っ玉は小さい人だった。 結局ばあちゃんあっての祖父だった。 ばあちゃんは好き嫌いが激しく、意地の悪い人だったが、この人は祖父より何倍か肝っ玉が太かった。
  
 そのばあちゃんが大博打を打ったことがある。
 昭和40年代ボーリングが大流行した後、線香花火のようにすぐ廃れたことがあったが、その閉鎖した郊外の駐車場つきボーリング場後を、手元に現金が一銭もないのに一億円で買いに出たのである。 どうしたか・・・その頃、祖父は他のパチンコ店の親父達三人と共同で会社を作り(一番年上の祖父が社長をやっていた)それぞれの自分達の店の他に、会社でパチンコ店を二店やっていたのだが、その会社の一店を売った金を元手にしたのである。 この店は数年前1000万以下の値で買ったのだが、売った時の値段が何と5000万になった。 誰がそんな馬鹿な値で買ったのか・・・まわりの商店街の親父達が金を出し合って買ったのである。 その値で買えば並びにある自分達の店もその値になるとの思惑で・・・70坪の土地を坪単価70万で買ってくれたのである。 他の二人のパチンコ店の親父達は最初、金もないのに!と大反対だったが、店が5000万で売れると分かった時点から何も言わなくなったらしい。 
 その閉鎖したボーリング場の持ち主は北陸地方では少し名の知れたレッカー会社を母体にしている男で、若い頃はチンピラみたいなことをしていたがレッカー会社を起こしてから急成長した会社の社長である。 その会社が国税の査察に入られて一億以上の追徴金を払う羽目になり、急遽閉鎖したボーリング場を売りに出したのである。 その売買の話の途中、その社長は売れると分かって、一億は少し安かったなぁと思ったのだろう。 イザとなって値を上げる話をしだしたのである。 祖父は返事できず、黙り込んでしまったのである。 それを見て、ばあちゃんはその男の名前を呼び捨てにして、こう啖呵を切ったという。
 **貴様、キンタマぶら下げているのか!男が一度こう言ったのを土壇場で翻すとはなさけないやっちゃなぁ、もうこの話はこちらから断るから、無かった事にして帰れ!
 それを聞いて、その社長も悪びれずすぐさま頭を下げて対応したと言う・・・悪かった、悪かった、堪忍してくれ、一億でよい、一億の話だ・・・と。
 
 もともと、この話には祖父は内心恐れをなしていて、実際には積極的ではなかったらしい。
 そうであったのも関わらずばあちゃんだけが何故こんな話にここまでこだわったのか、そしてそれは彼女にとって大博打であり、そうまでするどんな読みがあったのか? その真意は当時誰も知らなかった、そばにいた祖父ですら知らなかったのだが・・・後でそれを知った時、オフはあきれて開いた口がふさがらなかったものだ。
 
 
 今日の仕事


 朝の内しばらく晴れていたが、9時過ぎぐらいから激しい雨になった。 本来なら土蔵の周りをブロックで囲んで、土壁との間に生コンを流し込んで土蔵の縁の下へ水が入り込まないようにしたいのだが、そのためには二日間雨が降らない日が続いてほしい。 ところが週間予報ではこの先秋の長雨で傘マークがずらりと並んでいる。 土蔵では内部の階段作りの仕事があるのだが、ネットで注文した階段の踏み板が届くのが三日後である。

 今日は脱衣所の床にタイルを貼る仕事をした。 まず、20センチ角のタイルを並べて行って縁やコーナーのタイルの寸法を出し、グラインダーにダイヤモンドカッターを取り付けて大きさに切る。 全部並べてから、一度下地のコンクリート面に付いている以前の接着剤や、微妙なデコボコをブラインダーで削り出来るだけ平らにする。 コンクリートの削りクズが舞い上がって大変だし、その後部屋の床は真っ白である。 
 ひとまずそこまでやってから、風呂場の一部の壁面にモルタルを練って塗りつけておく。 ここにもタイルを貼るのだが、ここは下地から作らねばならない。 昔なら塗ったモルタルの上にタイルを直接貼っていったのだが、今はいったんモルタルを乾かしてからタイル用の接着剤を使って貼る。
 再び脱衣所の床のタイルに接着剤を付けて一枚ずつ貼って行く。 このタイル貼り仕事も左官屋仕事で根を詰めながらやる上、しゃがんでの仕事だからしばらくすると腰が痛くなって来る。
 明日にでも貼る風呂場のタイルの接着剤が足りないのでホームセンターへ買いに行って、その後また縁やコーナーのタイルを貼って脱衣所のタイル貼りが終った。