昔の話 2

 祖父が56歳でパチンコ店を始めたが、17歳年下だったばあちゃんはまだ39歳だったんだなぁ・・・
 パチンコ業を始めたが、所詮水商売である。 浮き沈みがかなりあった。 比較的良かったのは二、三年で、オフが小学校3〜6年の頃は最悪だった。 祖父が人から勧められて伏木という港町のつぶれたパチンコ店を買い取って改装して始めたのだが、始めて数ヶ月で店をとじることになって残ったのは膨大な借金だけだった。
 自分で言うのもなんだが、その頃オフは本当によく働いた。 学校から帰ると祖父の弁当を作って離れたところにあった店へ行き、閉店して店に鍵をかけ帰る10時頃まで店で働いていた。 次の朝起きると、祖父はもういなかった。 何しに行くのか知らなかったが朝早く伏木へ行き、午後に帰ってきて店を開くのだが・・・その伏木ではばあちゃんがパチンコの店を飲み屋に改造して女の人を使って朝から晩まで働いていた。
 飲み屋というが、昼は食堂で、当地ではまだ珍しかったお好み焼き屋と季節料理屋で松茸やカキの釜飯が人気があったように記憶している。
 その店へ連れて行かれた時、生まれて初めて焼きソバを食べたのだがのだが、オフはこの世にこんな美味いものがあるのか!と驚いた。
 飲み屋はコップ酒を出す時皿の上にコップを載せて出すのだが、わざとさ皿に酒をこぼれる位に注いで出す。 これはある人のアイデアだったらしいが、酒好きな連中はまず皿の酒を飲んでからコップの酒を飲むのだが、これが酒飲みには大ウケしたらしい。 ただ、夜遅くまで酒飲みがグダグダと同じことを言っている、それに対応している飲み屋という商売は大変だなぁ、と思った印象が強く残っている。
 これは外部のことで、その頃、オフの内部は複雑な成長をしていた。
 とにかく、貧乏は怖い、という恐怖感がこの頃強く植えつけられてそれがトラウマとなった。 大学の頃、どんなことがあっても無一文になれなかった。 その頃若者特有のおおらかさと大胆さで、無一文になり友達に借金をするのがステイタスのようにハバル雰囲気がオフのまわりの連中は持っていたが、オフは無一文になるのが怖く、必ずいくばくかの金を隠していた。 そんな自分が嫌でたまらないのだが、そうしないではおれないものが内部にあった。
 それに祖父から時々、お前のようなものは育てる筋合いも義務もないのだ、嫌なら父親と母親がいるのだからそこへ行け! と何度か言われた。 
 今なら借金苦からついつい出た愚痴だろう、と思えるが、子供だった当時、そのように言われても、どうしていいのか分からなかった。
 その当時、小さな家出を繰り返していた。 子供だからお金もないし何処へ行ける訳でもないのだが・・・多分どうしてよいか分からない気持ちの持って行き場が、そんな小さな家出だったのだろう。 それにばあちゃんに対してもどう振舞えばよいのか分からなくなっていた。 この世にお前ほど可愛い者はいない、目に入れても痛くないほど可愛い・・・としばしば言われるのだが、そんな言葉とは逆に無意識に邪険に、邪魔者あつかいされることが時々あった。 その矛盾みたいなものを、ばあちゃんの愛情を裏切っている、そんな自分は悪い子だ、と無理に思って自分に納得させようとしていたところがあった。
 なんだか変なところに話が言ってしまったが、今日はこれまで。



 今日の仕事


 ようやく今日で外壁の腰板仕事が終わった。 朝一番西側の腰板の下の枠と横の枠の取り付けが終わり終了した。
 その後、腰板に二度目の塗装を済ませる。 昨年末やった東側の壁面と同じ色に統一したかったが、当時の混ぜ合わせが分からなくなってしまっている。 それに昨年張った腰板は杉材だったが、今回は桧材で塗装に滲みこみが違うので、たとえ同じ色を塗っても違う風合いに仕上がってしまう。 今回の腰板は一度目の塗りはライトオーク色でいかにもうれしがり屋さんのような色だったが、最終的にはダークオークとスプルースを混ぜてどちらかと言えば渋いオリーブ色にした。
 その後、雨樋の足りない部品を買いに行って雨樋仕事を終了する。 これからしばらく秋の長雨になるというので、これで一安心である。

 午後からは買い物に行く前に練り置いていた下プラを内部の壁に下塗りする。 さらに漆喰を練って縁側の横の外壁に上塗りをして、残りを色を付けてその裏の室内側にも塗る。 これで外壁関係は全部終了である。 脱衣所と風呂にタイルを張る仕事に入ったが、そこへ弟が貰い物だがと言って久保田の萬寿を持ってきた。 たしかこれは一万円以上する日本酒だったはずである。
 綾部から舞鶴に抜ける近道である菅坂峠の新しい道は通れたか?と訊くと、出来ているようだがまだ通していない、との返事だった。 この道は当初今年の三月開通の予定だったが、昨年末からの雪で開通が今年の八月に延期されていた。 が、九月に入ってもまだ開通していないと言うことは・・・オフの仕事が遅れているのも無理もないことなんだなぁ。