元音楽の先生

 近所の人のうちすぐ裏というか、上の家の主人は元中学校の先生をしていた人で温厚なおじいさんである。
 中学では音楽を教えていた先生で、いくつかの学校の校歌も作曲されているという。
 毎朝マロという名前の柴犬(オフが飼っていた犬も偶然同じマロという雑種犬だったが)を連れて上林川を渡った向こう側にある神社まで約一時間ほどの散歩されている。
 この年になると一時間の散歩は結構疲れます、とおっしゃるが、何歳ぐらいだろうか?
 数年前、胃ガンの手術のされたというが、せいぜい70歳ぐらいではないかと思う。
 時々納屋からハーレーダビットソンサイドカー付きの大型バイクを引っ張り出し、心地よい音を響かせて一走りしてこられる。  ハーレーやサイドカーなどに憧れた世代というのは、せいぜいオフより10歳ほど上の年齢層であると思う。 元先生も自分達夫婦が食べる分ぐらいは自分でお米を作っているので、刈り入れが始まったがしばらくは忙しそうである。
 


 今日の仕事


 今日から外壁の下見板を取り付ける仕事。 まず縁側ある南向きの一番奥側に三尺ほどの腰板を張る。 
 腰板の既存の製品は無垢の材でも厚さが10ミリ前後で薄いものが多い。 内部で使うならそれでもよいと思うが、外壁に使うにはもう少し厚いもの、せめて15ミリほどの厚さがほしい。 先日土蔵の床に張った桧のフローリングは15ミリ厚でちょうどよいのでこれの残りを使うことにした。 量が足りないのでネットで2坪分追加したが、なんと翌日に届いた上に安いしまあまあ良い材である。
 しかし問題がある。フローリングはサネ加工してあるのだが、当然のことだが繫いでも隙間出来ないようになっている。 しかし腰板に張るには板と板との間に目地が少しあったほうが見た目に心地よいものなのだ。 フローリングをそのまま腰板に使うとどうしても全体がべタッとした感じになってしまう。  そこで意匠の問題としてフローリングのサネ加工のオスの前側を少し大きめに削って、並べて張った時に目地ができるように加工した。
 しかし、これを据え付けの機械なしでやるのは結構手間が食う仕事なのである。 そこまでこだわらなくて薄い既存の腰板を張っておけば仕事は綺麗で早い。 しかし、いずれ時間がたてばその結果は必ず出ると思う。 この家に住む人はそこまでこだわった仕事をしているとはつゆ知らないだろうが・・・まあ、良い。
 午前中で縁側の端は組むだけになる。 午後からは元便所の西側の横の壁に仕事を移す。 ここは6尺(1・8メートル)ほどのスパンがある箇所で、さらにこの後は元便所正面に移り、ここは10尺(3メートル)ほどある。 本来仕事は長いほうからするのが鉄則だが、今回余った材を使いながらの仕事なので順序を逆にしてしまった。 ここの仕事を半分ほどした時点で夕方になる。