垂れパンダ顔のオッサン

 ようやく昨夜あたりから身体の調子が本調子に戻ったようだ。 その証拠にビールが飲みたくなって、寝る前に缶ビールを一本飲んで眠った。
 4日間ブランクがあったが、これを休養期間と考えてこれからは仕上げに向けてペースを上げていこうと思う。


 今日の仕事


 朝の内屋根に破風板を取りつける。 西側の道路に面したところは先日余分な張り出しを切ってあるので母屋や桁を隠すかたちで垂木に留めればよい。 東側は母屋や桁の出を切り落とさないでそれを残して破風板を取り付ける。 こんな形で付いている破風板はあまりないだろうが、けっしておかしなことをしているわけではないと思う。 破風板はその字のごとく強い風が屋根を捲り上げるのを防ぐためにあてる板である。 妻側の端に板を当てるだけで風の力をそぐのである。 ちょっとしたことだが、これを考え付いた人は本当に偉いと思う。 オフの考えは母屋や桁は少しでも長いほうが良いだろうし、それが破風板からはみ出しているからといってとくに問題があるわけではない。 東側を切り落としたのは、見てくれの問題だけでそうしたのである。 ただ仕事としては母屋や桁を切り落としておいて取り付けたほうが楽である。


 田舎に帰っている間に土蔵の窓のサッシが届けられていた。 それを取り付けをするが、その内の一階の窓サッシを枠に乗せて仮止めして窓を動かしていて、上の窓が動かないことに気が付いた。 この時点で商品が注文したものとは違っていることに気が付く。 頼んだのはダブルハングといって縦に上下する窓のうち二枚とも動くタイプだったが、届いていたのはシングルハングといって下の窓だけしか動かないタイプである。 仮止めしたところが少し傷になってしまったが、悪いのは間違えて届けた業者である。 話の中で上の窓はロックされていますが外すと動きますよ、とわざわざ言っていたのは注文を受けて行ったオッサンである。 お盆前で忙しかったのかもしれないが、今回注文を取りに来たのはいつもサッシを届けて来る、いかにも頼りなさそうなオッサンだった。


 二階の窓はルーバー窓で、せめてこれだけでも取り付けようとして、脚立にのって二階へ持って上がるが、外部からしか取りつかないことが分かりまた持って下りる。 土蔵は密閉度が高いのでペアーガラスタイプにしたが、ペアーガラスタイプは重いのだ。 重い窓枠を外から梯子に乗って取り付けようとするが何度やっても入らない。 これはサイズが大きいのではないか、と思い持って下りて測ると、案の定5センチ大きいタイプである。 この時点でカッ〜と頭に血が登る。 間違うといけないと思いサイズはわざわざ業者のオッサンに測らせたのである。 下の窓は両方ともサイズは間違えていなかったからなお腹が立つ。 同じ柱が二階の上まで上がっている箇所である、注文書を書きながら横幅が違うことがおかしいと思わなかったのだろうか。 電話で怒鳴りたいところだが、悔しいことに業者は16日までお盆休みなのである。
 おそらく盆開けに電話するとあのオッサンが商品を引き取りに来るだろうが、脱力した垂れパンダのようなその顔を見ると、やれやれと思うだけで怒る気もしなくなるだろうなぁ。

 
 仕方なしに土蔵のフローリング張りを始める。 床張りは最後の一枚に傾きが出ないようにするため、最初の一枚を張る時に、両脇の反対側からの寸法を測り下地に墨を打ってそれに平行に張り始めるものである。 それをやると案の定一寸五分(4・5センチ)あまりの狂いが出ていた。 つまり左右の壁がその寸法だけ平行になっていないということである。  床張りは最初の一枚が決まれば後の仕事は早い。 その一枚目を張る壁面がデコボコしたりアールをかいている。 そういう場合はヒカルという仕事をして曲がりに合わせて墨を付けて材をそれに沿って切っていく。 オフの場合は山の家でさんざん曲面や曲がった材料を扱ってきているので、この仕事に関しては自慢じゃないが鼻歌ものである。
 おそらく今の若手の大工などは差し金の使えないような曲面を扱う仕事は出来ないのではないかと思う。 訊くところによれは、木材の場合少しの曲がりやソリが自然にあるものだが、それすら嫌がって工場で垂直にした集成材を使いたがるらしい。
 最初の一枚を決めてその後数枚を張って今日の仕事を終わりとする。