傾いている

 朝、玄関の天井に野地板と垂木が見えている部分があるが、そこの野地板に化粧で下から板を張る段取りをしていると、近所の変なオジサンが来た。 残っている蔵の中のものを運び出すと言うが、訊くと今日は一人だという。 隣の婆さんもその息子も来ないと言う。 自分達のものを運び出すのに家の者が誰も来ないとは一体どうなっているのだ。 オジサンも申し訳なさそうに、後で嫁さんが来るのだが・・・全部捨ててくれて良いと言う話だ、とのことだと言う。 それを聞いて、なんだか少し腹が立ってくる。 
 変なオジサン一人ではどうしようもないので、蔵の二階へ上がって片っ端から布団や衣類やその他諸々のものを下ろす。 まだ一度も使っていないシーツなどが入った箱が山ほどある。 小降りだが雨降ってきたので、下へ降りて降ろしたものを隣の空き家の玄関まで運んでそこに積む。
 そのあたりから嫁さんが申し訳なさそうに来たが、こちらが手伝っているのが当たり前のようで挨拶の一言もない。
 次に一階のものを運び出す。 こちらも諸々の小物や布団や衣類、宴席の御膳などや引き出物、何時のものか分からないようなカルピスやサラダ油など山ほどある。 
 あまりにも多いので途中で嫌になって、足踏み式のミシンや箪笥など大きなものは出しても置くところに困るので来週にすることにした。
 嫁さんは、来週は来れないのだと言う。 婆さんも息子も来れないと言うのだろうか、それを聞くのも嫌になる。 

 作業をしていて、外部から見ていると気が付かなかったが山側の壁が見てすぐに分かるくらい傾いていることに気が付いた。
 一階の床は抜け落ちているので、剥がして見てみると石置きの基礎の上の土台がボロボロに腐っている。
 これでは手を付けれない、どうしょうもない状態である。  曳き屋の仕事だなと思うが、かなり分厚く塗り壁してあるのでジャッキで上げるにしても、おそらく大変な作業になるだろう。 それを見ているといっぺんに力が抜けガックリと来る。
 とにかく・・・あれこれ今後のことを考えるのは今は止めておいて母屋の完成を急ごうと思う。 


 今日のお駄賃として貰ったもの、ボロボロになっているツイタテと漆塗りのお膳を二個、傘立てになりそうな壺一個。
 

 今日の仕事


 午前中は蔵のモノを運び出すことで終わってしまった。
 玄関上の汚い野地板に化粧の意味で下から板を張って行くが、塗装してある板が少なかったのでこれは明日の作業にして、とりあえず板に塗装をしておく。
 昨日やった流し台のカウンターの仕事がどうも気に入らないので、外してまわりの縁にカンナを掛けなおす。 するとせっかく付けた溝が浅くなったので付け直したりする。 天板にカンナを掛けて失敗して筋がいくつも付いているのが気になってしょうがないので、もう一度カンナを掛けるが、どうやらなお悪くしてしまったようだ。
 先日漆喰を塗った風呂場の脱衣所や和室の縁側のはみ出したバリ取りをようやくする。 
 リビングとダイニングの間に並んで二本の柱が立っているが、その間に外せる横木を二本渡して簡単な仕切りとする。 どうも二本では少ないので、明日にでももう二本追加したほうが良いだろう。