籠手を買う

 先日ネットで注文した照明器具がもう届いた。 
 左官仕事の後、玄関の上の蛍光灯を外しさっそくそのブラケットを取り付ける。 昭和初期的なもっとレトロな外灯を選ぼうと思っていたのだが、デザインをレトロだけに頼るのは何となく情けないものがある。 今では懐かしい品であっても当時は時代の先端を行く品だったはずだから、現在の新しい感覚で新し物を取り入れるその心意気こそがいつの時代でも大切なのある。
 そう言いながら、便所はレトロに頼った。 レトロには取り残されたようなどこかわびしいものがあるが、一人で入る便所でわびしくなるのも・・・なんだかなぁ・・・

 昼の買い物で卵を買ってきて、昨日食べ損ねた牛肉の柳川をする。 新牛蒡は歯ごたえといい、香りといいじつに美味しい。 絹サヤもオヒタシにしたが、シャキシャキ感とほんのりした甘みがあってこれも美味しい。 今の時期の新鮮な春野菜は何を食べても本当に美味しいと思う。


 今日の仕事


 壁塗り二日目である。 昨日に引き続きBドライという砂などを調合してある石膏をラスボードに塗りつけていく。
 午前中で一袋塗ったが、手持ちがもう後一袋しかないので建材店へ行ってさらに7袋を買った。 ついでに籠手を新しくしようと思い一つもらおうかと言うと4000円の値段がついている。 もう少し安いのはないのか、と訊くが、うちはプロの人しか買いに来ないのでこれで一番安いものです、と言うことだ。 オフがこれまで使っていたのはホームセンターで買った数百円の品である。 最近根元のところがぐらぐらしてきている。
 昔から、弘法は筆を選ばず、と言われているが、最近では、仕事は道具がしてくれる、とも言われる。 たしかにその通りである。 オフのような駆け出しでもまあ何とか大工仕事がそこそこ出来るのは、丸ノコと電動カンナがあるからである。
 しかし、左官の籠手は昔ながらの単純な道具である。 オフのようなものには少し高いなぁ、と思いながらも思い切って買った。
 話を訊くと、調合石膏塗りと漆喰塗りではプロは違う籠手を使うのだそうだ。 もちろんモルタル塗りの籠手とかもあるんのだそうだ・・・いやはや・・・未熟者が安い籠手を使ってよい仕事をしようとするのは所詮無理な話だなぁ。
 食料品の買い物もして遅い昼を食べた後、急に眠くなり珍しく20分ほどうとうと昼寝した。 春の午後の眠りはじつに気持ちが良いものだ。
 その後気合を入れて壁塗りを続ける。 新しい籠手は昔から使っているように手に馴染み、重くない上に硬さも程よくまことに使いやすい。
 これは良いものを買ったなぁ、とあらためて思った。