五本の柱

 近所の変なオジサンは顔を出さなくなった。 おそらくオフの仕事場へもう行ってはいけない、と言われたのだろう。 
 先日お酒を二升渡したのだが、どうやらその酒を嫁さんに言わないで、どこかに隠してこっそりと一人飲んでいたらしい。
 田舎へ帰るときスタンドでガソリンを満タンにしたのだが、その時訊いた話で、お酒を渡さないように言ってくれと頼まれている、とスタンドの奥さんが話していた。 まあ、変なオジサンは来れば来たで何かと重宝するのだが、いちいち彼の仕事を見つけてやらねばならないのが煩雑であるし、休憩時間には缶珈琲でも買って来てとお金を渡して、休みたくもない休憩を一緒に取ったりせねばならない。
 一人仕事はいろいろ余分な手間を食うことがあるが、いったんこれに慣れてしまうと一人仕事ほど気楽なものはないものである。

 今日の仕事

 リビングの天井に大引き、大引き受け、丸太などを取り付ける。
 仕事は午前中に終わる予定だったが、丸太の寸法を間違えていた。 引き算をするところを足し算をしていて、短くしてしまったのではなく長かったからまだ良かったのだが・・・何だか昨日から今ひとつパッとしない仕事振りである。
 しかし、これで天井の下地仕事は終わりで、後は天井板に塗装をして順次張っていけばLDKの天井仕事は一応終わりである。
 つぎにリビングの壁の仕事に入っていくのだが、その前にリビングを広げるので出てきた柱を何とかせねばならない。 柱は二、三本は出て来るのは仕方ないと思っていたが、最終的に出てきたのは何と五本である。 リビングの中に五本もの柱が立っているのは壮観であってどこか可笑しいのだが、笑っている場合ではないのだ。 三本は仕方ないとして、とにかく二本を隠すか、外さねばならない。 リビングの中心はちょうど母屋の桁の下に当たる部分であり、リビングはその横の納屋との繫ぎの部分を取り込んでいるので部屋の中に柱が沢山出てきてしまったのである。
 近所の人の話では今のリビングは昔牛が飼われていた場所で、牛は今の玄関に頭を出してモ〜ウ、モ〜ウないていたとのことだ。
 納屋との繫ぎの天井を受けている新しい柱は短い梁を入れて横へすらすことにした。 このための材はもう用意してあるので、この仕事を明日にでも取り掛かろうと思うが、その場合下部が折れてなくなっている柱に下部を継ぐことから始めねばならない。