浮沈

 朝起きるとまた雪が降っていた。 猫が縁の下を通って入ってきていて、ゴミの袋の中のトレイを食いちぎって散らかしていた。
 昨日エボダイとカレイを干物にしたのだが、それらが入っていたトレイだが、せいぜい魚の臭いがしただけだと思うがよほどお腹を空かせていたのだろう。 最近大きな図体の野良猫がウロウロしていて、隣の家の猫と時々鉢合わせて唸りあっている。

 ここの家は何度家に手を入れているいるか分からない。 頻繁に数年おきに手を入れていたのだろうと思う。
 時々フラリト顔を見せる近所のおばあさんの話では、ここの家は一度も大掃除をしているのを見たことがない、と言っていたがその通りかもしれない。
 この家の元の持ち主は道路沿いでガソリンスタンドを二軒経営していて、一頃はモータリィーゼイションの発展に合わせてかなり羽振りがよかったのだろうと思う。 昨秋にここの部落のお祭りがあり獅子舞が廻ってきていたが、その獅子舞の獅子頭をはじめ道具一式を部落に全部寄付したので、獅子を舞うときに一番最初にうちのスタンドから始まるのだ、と元の家の持ち主のおばあさんが自慢していた。
 ただ長くそのおばあさんの女所帯だったので家に対する一貫した考えがなく、その場その場での思いつきでリフォームしていたので、何度も改装している割には家そのものは良いものになっていない。 と言うか場当たり的な仕事の後ばかりが見受けられ、かかわった職人達も表面だけきれいにする仕事ばかりしていたようだ。 その息子の代になっても、新しいもの好きの性格は変わらず、部屋の中に線を張り巡らし部屋を全部内線で繫ぐというバカなことをしていた後などがある。
 そしてとどのつまりが隣に現代風な家を建てたのは良いのだが、スタンドのセルフ化の波で当のスタンドは閑古鳥が鳴いている感じである。
 今オフが改装している茅葺の古民家も、新しい家の支払いの一部として施工業者に事実上譲渡したものであり、業者が売リ払い、たまたまオフが買ったのである。




 今日の仕事

 昨日から配電盤が天井からぶら下がった状態でいた。
 ブレーカーを落とし、配電盤から出ていた配線をいったん全部取り外す。 大元の引込み線が届く限り配電盤を移動してとりあえず壁に仮止めする。 それから個々の配線で新しくしたものをブレーカーへと繫いでいく。 古い配線をそのまま使うものは、天井が高くなったのでその上を通し直しこれもブレーカーに繫いでいく。
 全部が終わったのはもう夕方であったが、それから少しだけリビングの天井仕事をする。 ダイニングと同じように大引き受けを桁の上に取り付け、それに大引きを掛けていく仕事である。