ネクタイ男

 朝一番近所の変なオジサンが来て一昨日彼が車に積み込んでくれた廃材を一緒に捨てに行く。
 車一台がやっと通れるような峠越えの細い近道を通って行く。 本来なら舞鶴市まではもっと近道があるが、現在は冬期間で通れない。
 舞鶴市は東舞鶴と西舞鶴があり、その間が違う街のように離れている。 西舞鶴は江戸時代は小さな城下町であったが、明治に入ってその東に軍港が開かれて、それまで僻村だった東舞鶴が発展していったらしい。 たしかなことは分からないが傍目には同じような規模の街のように見える。
 ところが舞鶴自動車道が阪神と結ぶようになって、お隣の福知山市のほうが阪神と近くなり、北京都の中心的な都市がそちらに移りつつあるらしい。 
 車の中で変なオジサンは金曜日廃材を捨てに行ったとき途中で寄ったコンビニへ寄って欲しいと言う。
 おかしいなぁ、コンビニになんか立ち寄ったっけなぁ・・・と思い、何の用だと聞くと、安い長靴があったのでそれを買いたいと言う。 どうやら寄りたいのはコンビにではなくホームセンターのことだと分かる。 その外ポケベルで天気予報が訊ける、などと言ったりもした。 ポケベルなど懐かしい言葉だが、携帯のことを言い間違えているのだろうが、どうも最近の新しい言葉が苦手らしい。
 オジサンには今のところ手間賃を払っていない。 こちらが頼んで来て貰っているのではないから、お金は払わないよ、と最初に断わってある。
 それでも毎日来るので、その都度お昼代やタバコ、酒などを買い与えている。 今日は1000円ほどの長靴を買うと言うので、せめて2000円ぐらいのにしないとすぐ穴が開くよ、と言って買って上げた。 オジサンがお昼から出てきた時に、少し酒の匂いがした。 お神酒を飲んできたな、と言うと、はい、と素直に返事をしていた。 明日田舎へ帰る予定をしているが、そのお土産においしい酒を買ってきてやる、と約束していたのだが、それを止めようか、と言うとしょげていた。 
 
 午前中廃材を捨てに行き、午後から石膏ボードを車に積み込んで綾部市の民間の産業廃棄物捨て場へ持っていくと、石膏ボードは駄目だ、と言われてしまった。 誰だったか、そこは受け付ける、と言っていたのをたしか訊いたのだが・・・そこの受付で訊くと瑞穂町へでも持って行け、と言う返事だ。 先日瑞穂町へは二度と来ないと啖呵を切ってきたばかりだ・・・途方にくれる。 そのまま積んで帰り、綾部市のクリーンセンターへ電話をすると、行政なので名前は言えないが福知山市の業者に訊いて見てくれ、との返事だった。
 電話すると、当方では持ち込みは出来ませんが引き取りに行きます、と言う話だ。 これは有り難い来て貰おうと言うと、すぐ行きます、との返事だ。  ところが来たのはネクタイを締めた男で、契約書を持って来てこれに署名捺印をしてもらわなければ引き取れないと言う。
 処分料金の他に、引き取り料金と、積み込み料金合わせて1万円掛かります、と言う。 積み込みと言ってももう軽トラに積んであるからガソリン代を寄こせなどとケチなことを言わないからそのまま運んでくれ、と言うと、残念ながら当方ではそれは出来ません、あくまで届出を済ませた指定されたナンバーの車でしか運べないようになっていますので、と言う。
 この野郎、オトトイ来やがれ!と叫びたいところだが・・・足元を見られてしまっている。 契約を交わすと、男は明日は無理で明後日引き取りに来ます、と言うので、嫌味で、お前が引き取りに来るのか?と訊くと、いえ、いえ、我が社の従業員が参ります、との返事だった。
 だいたいこの世の中はネクタイを締めたような男が出てくると、決まりだとかヘチマだとか言って、彼らを食わすための無駄な金を払うシステムになってしまうのだ。


 今日の仕事

 リビングの天井を張るための、大引きとそれを受ける大引き受けの取り付けの仕事をする。
 意匠で、それらをさらに受ける丸い古材を天井下に取り付けるつもりだが、その仕事までは至らなかった。