ケツを捲くる

 近所の変なオジサンが来て、雪が降る前から外に出してあった廃材を軽トラに積んでくれたので、一緒にオジサンの借りているという田んぼに燃やすため捨てに行く。 あろうことか、農道で片側のタイヤが脱輪してしまった。 四駆を掛けて抜け出そうとしたが、そうすると今度は腹がつかえてかえって動かなくなりそうなので、近くのスタンドの車て挽いてもらった。 少しタイヤが空回りしたが何とか抜け出せた。
 三度目の廃材を積んでいるときにスタンドのオヤジが来て、田んぼでものを燃やすと叱られるでぇ、とオジサンを叱って行った。
 オフも鑿を研ぎながらそれを訊いていた。 車にはせっかく積んでくれた廃材も乗っているので、そのまま運転して近くの現場へ行って土建屋の親父さんに資材置き場の片隅ででも燃やさせてもらえないかと聞くと、それは駄目だと断られる。 

 午後から京都府指定の瑞穂町という所にある廃棄物処理センターへ運ぶ。
 以前に綾部市のクリーンセンターへ廃材を運んだ時、建築廃材は産業廃棄物となるので綾部市では受け取れないので県指定の廃棄物処理センターへ運んでくれという返事だった。 それはどこにあるのかと聞くと瑞穂町の廃棄物処理センターだと道順まで教えてくれた。 あいにくその時は道路が災害で通行止めになっていたので、舞鶴市の民間業者がやっているところへ運んだ。
 ところがである・・・数十キロも運転して瑞穂町のセンターへ行って、受付でどこの業者さんですか、と聞かれるので、綾部市に住む個人です、と答えると、ここではどうあろうと業者以外の廃棄物は受け取れないと言う返事だ。
 綾部市のクリーンセンターで聞いたら綾部市では産業廃棄物は受け取れないので、ここへ持って行けと言われたのでわざわざ来たのだ、と言うのだが、個人のモノはここでは受け取れない、の返事の一点張りだった。 それを聞いてとうとう温厚なオフも、お前じゃ話が分からないからここの責任者を出せ!それまではどんなことがあってもこの計量機の上から車を移動しない、と凄んだ。
 オフと同年輩ぐらいの男が奥から出てきて、何度か同じことを押し問答をしている内に、廃棄物を積んだ車が後ろに少しずつ並びはじめた。
 苦りきったその男は、分かったから廃材と書いてある場所へ車で行って捨てて来い、ただし今回だけだ!と言って折れた。
 廃材を捨てた空の車を計量した後、オフの名前の後に組と書かせ、つまり**組とあたかも業者のような建前にして処理してくれた。
 しかし考えてみればおかしな世の中になったものである。 自分の家を自分で壊してもその廃材を持って行き場がない。 それもそうだが同じように自分で自分の家を建てる場合も、建築確認申請が県の土木では受け付けてくれない。 どうあろうと個人は資格がある業者ではないからだと答える。 それを知っているからオフは今のところ確認申請を出さねばならないような建築面積を増やすリフォームは避けている。
 問題は誰がやろうと建築基準法に違反しない建物を造るか造らないかなのに、行政は自分で自分の家を造ったり、壊したりすることすらを認めていないのだ。 というより行政は自分で自分の家を造ったり、壊したりすることををまったく想定すらしていない、あるいは個人ではハナからそんなこと出来ないと想定しているから、このようなおかしなことが起きているのだ。

 それにしても日本語に、ケツを捲くる、とか、ケツマクリと言う語彙がある。
 よく時代劇などで、煮るなり焼くなりしやがれ!とか、切れるもんなら切りやがれ!などと威勢のいい啖呵を切って、着物の裾を捲くって背中を見せて座り込むシーンがあったりするが、今日という今日は普段温厚なオフもとうとうケツを捲くったぞよ! あははは・・・ 

 今日の仕事


 昨日造作にかかったマグサの下側に深い五分(15ミリ)の鴨居の溝、上側に浅い一分(3ミリ)敷居の溝を掘って造作は終わり、オジサンに手伝ってもらって二人で足場の上に運ぶ。 2メートルほどの高さの足場に上がって二人で片側づつ持ってホゾを入れようとするが、様子を見ているとオジサンはどうもフニャフニャしていて高いところはどうも駄目みたいである。 あんたは瓦屋に行っていると聞いているんだが・・・と言うと、下で手元をしているだけで僕は屋根には上がらないんだ、との返事である。 少しおかしな人の場合普通より臆病なことはよくある事であるが・・・よりによってこのオジサンもそうだったとはなぁ・・・。
 仕方がないから、車のジャッキを持ち出して片側を少しずつ持ち上げて、そのつど下に木のコロをひいて高さを上げていって、入れようとするが上手く行かない。ホゾ穴も少し狭かったので一度苦労して抜いて穴を広げるがやはり駄目である。
 とうとう最後は今日仕上げるのを諦めた。 その後寸法に違いがないか計ってみて、ようやく原因が分かった。 両側の柱も差し鴨居も傾いているのだ。 それもハの字型にお互いにお辞儀しあうようにだ・・・逆なら問題はなかったのだが・・・結局上から水平に入れる場合一番狭い幅に合わせないと入らないということなのである。 そのようにして入れた場合、どうしても広がった下側に見てくれの悪いことにホゾの隙間が出来てしまうのである。 やれやれ、と綺麗な仕上がりを諦める気分になっていたが、すこし後になって、傾いている柱や差し鴨居をマグサの幅に垂直に切り込みを入れれば隙間が現れないことに気が付く。 これが時間があれば諦めてすでに幅を小さくする作業に入っていて、後で気が付いてアレレ!となったのだろうが・・・夕方で時間切れになって考える余裕があったのが、かえって良かったことになる。