本立て

 昔、オフが小学校から中学時代住んだ家は車が通る表通りから曲がった小路を入ったところの、いわゆる裏通りにあった。
 向かいの家が大工さんの家で、その横に2〜30畳ほどの広さの空き地があって、普段はお子供達の格好の遊び場だった。 どこかの家の普請の仕事が入ると、大工さんはその空き地に簡単なテント掛けの小屋を作り、そこへ柱などの材木を積んで下仕事をしていた。
 夏の暑い日上半身裸になり黙々と鉋を掛けている姿と、すぐ近くにある小さな用水の横で鉋の刃や鑿などをこれも黙々と研いでいる姿を妙に覚えている。
 中学時代の授業に男子だけの技術の時間があり、その授業で本立てを作ったことがあった。 一応オフも作って出来上がったが、どうもぐらぐらして安定しなかった。 そこで大工さんにぐらぐらするのを直して貰えないか頼んだ。 大工さんはそれをちらりと見て、そこへ置いておきな、と言ってくれた。 夕方にはその本立てが玄関に置かれていたが、どこを押しても少しもぐらつきはなくなっていた。
 技術の先生が仕上がりを見て点数を付ける時仔細に見て、これは全部自分でやったのか?と訊かれて思わず、最後近所の大工さんにぐらつきを直してもらいました、と答えてしまった。 先生は、そうか、とだけ答えて終わった。
 だいたい皆が同じような本立てがある中で、オフの本立ては変わった形をしていて、たしか同じようなのはなかったと思うが、オフとしてはそのデザインを評価して欲しかった。 だが、その時の評価点は並みのものだったので、すこしがっかりした。
 あの時大工さんはどのようにしてぐらつきを直したのだろうか?・・・多分素人には解らないようにして隠しクサビでも打って締めたのだと思うが、そのプロの仕事を技術の先生は見抜いたのだろうか? あの頃は肝心なことが少しも分からないまま、ただ日々が過ぎていた時代だったんだなぁ。



 今日の仕事

 
 今日も天井に丸太の取り付け。  昨日一応一本だけ取り付けたが、大引きとの間に少し隙間があるのが気に入らなくて少し上げる。
 その分だけ仕事は遅れた。何とか最後には三本の丸太を取り付けた。 調整は明日に持ち越し。
 丸く曲がった材料に対しては大工の道具の中で一番大事な差し金が使えない。 それに丸ノコなども一応使えない。 だから切る作業は昔ながらの手ノコを使うことになる。 普段ほとんど切る作業は電動の丸ノコに頼っているので、手ノコを使うと疲れる上になかなか直角に切れない。 材料自体が丸い上に、曲がっているので作業台の上に安定して置けないなどなどの理由によって仕事が遅々として進まない。
 丸太を扱う仕事は今回が初めてだが、点数をつけるとせいぜい30点ほどの仕事でしかなかったと思うが、それでもこの仕事は目新しくやっていて何となく楽しい。 要領みたいなものが少し分かってきたので、次回からはもう少しましな仕事に出来るだろうと思う。