一人仕事

 昨日一日晴れていたが、今朝はまたぼたぼたと雪が降り始めた。
 朝の内材木屋から材木を積んできたのだが、車で走って来たたったそれだけの間に材木にこんもりと雪が積もる始末である。
 久しぶりに材木を扱う大工仕事をした。 仕事はなかなか頭に描いているように上手く運ばないものだが、木を切ったり、削ったりしているそれだけで何と言うか幸せである。 その証拠に材木を扱っているとあっという間に時間が経ってしまうのである。

 前に木工フェアーで買ったフローリング材を一箱分だけ持って帰って梱包を開いてみた。 柳杉と呼ばれる中国産の杉で作ったフローリング材である。 一枚の厚さが30ミリ横幅150ミリあり床板としてはぶ厚いものであるし、もちろん無垢の材である。 この厚い板を手にとって眺めているとじんわりと幸せな気分になって来る。 この厚手の床板を買った後、季節が移りこの家がやたら寒いことに気がついた。 そこでこれだけ隙間がある家は床暖房をするしかないなぁ、と思い始めた。 しかしそうなるとこの厚手の板の出番がなくなることが気になっていた。 先日たまたまネットを検索していて30ミリの床板でも大丈夫という低温式の床暖房があることを知った。 念のため電話してみると、問題は水分含有率でその値が少いさければ大丈夫だと言うことだった。 この板は良く乾いていて大きさの割りに軽いのでその問題も多分クリアーできるだろうし、横幅が出来れば150ミリまでというもう一つの条件にも合致している。 施工も器具があれば素人でも大丈夫で、その器具はお貸ししますと言うことだった。


 今日の仕事

 朝一番に材木屋に行き、桧の一等材の柱を仕入れてくる。
 知らない人は一等材といえばそれは良い材木かと思うだろうが、じつは材木の中では一番安い材なのである。 その上に特一等、上小節の一面無節、二面無節、三面無節、無節一面、無節二面、無節三面と続いていく。
 たとえばオフが買っている一等と無節三面とは二十倍以上の値段の違いがある。
 買ってきた材を削りダイニングと和室の口の間と茶の間のあいだに立ってそれぞれの間仕切りの建具を受ける柱を立てる。 
 例の根ガラミとその上の低い梁との間にである。 根ガラミにホゾ穴を掘ってみたがさすがは日本の地松である、シロアリが入った跡は残っているが木としてはまだかなりしっかりしている。 ヌキ穴や三方から敷居を受ける浅いホゾ穴を掘って、柱を寸法を取った長さに切って、下を根ガラミのホゾ穴に差して柱の上部をカケヤで叩いて少しずつ真直ぐにしていく。 本来なら垂直に立てるべきところだが、そうしてしまうと下の敷居の位置や鴨居の位置をはじめ何もかも合わなくなってしまう。 傾いている家にはその傾きに合わせて柱を立てるしかないのである。
 柱を立てていて今回も一人仕事の情けなさを味わった。 最初叩いてもカケヤで叩いても入らないので難儀していたら、下の敷居が大入れになっているのだが、敷居が少し傾いていてそれに引っかかって入らないのだ。 
 敷居に重石になるものを乗せて叩くが、もともと傾いていた敷居は叩く後とからすぐ傾く。 仕方ないから足で踏みながら叩くが、どうも位置が悪い。 叩く側の反対側に敷居があるのだ。 上の梁も少し傾いていて、その低い側からしか叩けない。 その頃になると片手であて木をして叩くなどと言う悠長なことは出来なくて、直接柱を叩く。そのうちにどうしたものか叩く度にズボンがすこしづつずり下がってきたりする。
 もう一人合い方が居れば何と言うことのない作業だが、一人でやろうとするからおかしなことが次々に起きる。 上手くいかないので一度外そうとすると、今度は上端が引っかかって木が割れてくる始末だ。 とうとう頭へ来て上部をほんの少し切り取ると、ようやく何とか入ったが、上に少しの隙間が出来てしまう仕事になってしまった。
 その後、玄関からダイニングへ入る仕切りの片側の柱を立てる下準備をしているところで、日が暮れてきた。 冬至は過ぎたが、冬至十日と言って正月までの間が一年で一番日が暮れるのが早い。 薄暗いときはろくな仕事にならないので、今日の仕事はこれでお仕舞いにする。