親切に困る

 朝から晴れわたって約一週間ほど断続的に続いた雪も当地方では一段落したようだ。
 玄関前には屋根から落ちた雪もあって、約1メートルほどうず高く積もっていた。 まあ雪国のオフにしてみればこの程度の雪には驚かない、これから天気が続けば見る見る減っていくぞ、と思いそのままにしておいた。 
 ところが夕食の用意をしていたとき、何か外でサクサクという雪かきをするスコップの音がしていておかしいなぁと思っていた。 その音がだんだん近くでしているので夕飯の準備が出来た頃、表へ出てみてびっくり、すぐ玄関前に人が立っていて玄関前の雪がすかしてある。
 スコップを持って立っていたのは時々顔をあわせるすぐ近所の無口なおじさんである。 エエッ!と驚いているとおじさんは、困ったときはお互い様だよ、と言う。 まさか特に困っていたわけではないんですよ、と言うわけもいかずなんと返事してよいか困って、わざわざ有難うございます、と言っていると、わしはジッとしているのが嫌いな性分だから・・・などとおじさんは言う。 こちとらは、そうですか、本当に有難うございます・・・などと恐縮して答えるだけである。
 このおじさんは時々道で会う。 会った時には一応挨拶をしているが、向こうは無口な人らしく首を振っているだけだったが、今朝あったとき、おはようございます、と言うと、向こうは何か言っていたが良く聞き取れなかった。 聞き返すのも面倒だから、こちらも笑いながら適当に首を振っていた。
 あの時雪かきをしてやろうか、と言っていたのだろうか・・・それにしてもそれは朝のことで、だいぶ前の話である。
 このおじさんは、以前綾部市のとある造り酒屋に勤めていたらしいのだが、仕事しながら利き酒というか、盗み酒をしすぎてとうとうアル中になって酒屋をクビになったというおじさんで、今は近所の瓦屋の手元をしているらしい。 まあ、なんと言うか見るからに、三度のご飯がおいしそうな感じのおじさんなのであるが、親切はありがたいが、困るんだよね、こんなのは・・・そのうちに酒でも一升手渡しておくかなぁ・・・。


 今日の仕事

 材料がないので、たいした仕事もしなかった。 
 朝のうち、玄関内の周りのベニヤを全部剥がした。
 玄関口の上には、昔スズメバチが造った大きな巣が半分壊れたままぶら下がっている。 その部分は玄関の外の天井裏だから分かっていたが、そのままにして置いたのだが、ベニヤを剥がしていてさらに半分壊してしまった。 汚い事この上ない。 田舎の山の家の天井裏にもスズメバチの巣があったが、そこの巣の中には蛇の死骸があった。 よく分からないが、スズメバチの巣を狙った蛇を怒ったスズメバチがいっせいに刺して殺した残骸なのだろうか・・・玄関の四方のベニヤを全部剥がして、その後きれいに掃除する。 玄関の天井は下が土間なのに部屋よりも少し高いのでこのまま下地を残してその上に板を張るかと思っていたが、逆にここの天井こそ吹き抜けにして12尺(3・6メートル)と高くして、上側の梁のところまで見せるようにしようかと思い始めた。 午後からはダイニングへの上がり三寸五分(10,5センチ)のカマチ、これはシロアリに見事にやられていたが、
取り外すが、その奥の一番手前の根太、これも一本シロアリにやられていた。 ともに外国産の赤松、つまりベイマツである。
 和室の板を剥がして見たのだが、昨日考えた根ガラミを厚板で挟んでボルト締めという手も、向こう側に大引きが1尺7寸間(50センチ間隔)で渉っているのであまりボルトが効きそうにもない。 
 天井は漆喰塗りの天井にすることに気持ちが傾いているが、初めてやる仕事だし・・・はたして天井に上手く漆喰が塗れるだろうか、それが一番こころを迷わせている点なのである。