壁落とし

 最近は朝のうち霧がかかって日が差さない。
 だいたい9時を過ぎる頃になってようやく霧が晴れて日が差してくる。  日が差した頃からだんだん暖かくなってくる。
 そんな訳で此処のところは仕事をはじめるのが一時間遅れて、9時ごろにずれ込んでいる。 



 今日の仕事

  今日はまず朝一番に古い漆喰壁に下地塗りのシーラを水で薄めて塗っておく。
 それから室内に敷いてある青いビニールシートの上のゴミや木屑を掃除して、梁の上の下がり壁をバールや大ハンマーで叩いて落としていく。
 両面塗ってあるので結構な量である。 一番下の塗り面は煤で汚れて真っ黒だからすぐ分かるのだが、裏面は一度塗りだが表面はその上にさらに二度塗ってある。 下地に竹小舞がしてあったがこれを急きょ残すことにして、丁寧に土壁を落としていく。 埃で上着もズボンも白くなるが、マスクをしての仕事だがマスクを通して土壁特有の匂いがしてくる。 むかし子供の頃、古家を壊している側を通った時に匂っていた乾いた土壁特有の匂いである。
 壁を落とすだけ落として外側に回り、先ほど塗ったシーラが乾いているのを確認して調合モルタルをミキサーに入れて水で捏ねていく。
 この壁下地モルタルはセメントに砂それに発泡スチロールの小さな粒、繊維質のスサ(わざわざアスベストではありませんと書いてある)それに目には見えないが接着剤などが調合してある。 普通の砂とセメントのモルタルからみればねっとりしていなくて、どちらかと言えばサクサクしていて軽い。 それを一坪ほどある古い漆喰壁に塗りつけていく。 これが下塗りになるのだが、壁にシーラを塗っただけだがちゃんとくっ付くものだ。 だが横に籠手を動かすとくっ付いているモルタルが壁の上を滑って剥がれてくる。


 壁塗りを終えて部屋に戻ると埃は静まっている。 落ちた壁土をバケツに集めて外へ捨てに行く。 隣の家との間に直径1メートルほどの池があるがそこへ捨てさせてもらう。 その後大型の業務用の掃除機で壁の埃や残った土壁の屑などを吸って行く。 掃除機はしばらくすると吸い込みが悪くなるので集塵部分を外で叩いてゴミや細かい土を落とす。
 古民家の改装とはカッコいいようだが、一方では長年溜まった多量の埃と煤とゴミとの格闘しながらの結構汚い仕事なのある。 

 汚い仕事ばかりやっていると嫌になるので他の仕事も交互に挟んで進めている。
 今日最後の仕事は外壁の主として柱などへの二度目の塗装である。 塗装は最低でも二度塗らないとすぐ色は剥げて薄くなってくる。 とくに雨が掛かる外壁は三度ぐらい塗るくらいが良いのかもしれない。