床を剥ぐ

 だいたい仕上がった奥の部屋二間を見てヤスが、なんだか外部に比べて内部は最初とあまり変り映えしないなぁ、とつぶやいた。
 たしかにそうなのである。 目に付くところで変わったと言えば、座敷の床の間に棚が出来たことと、奥の寝室では北側に二つ並んでいた押入れのひとつが縁側と窓になったぐらいなのである。
 この家の座敷は本来良い造りになっていたので、そうそう手をかけることもなかったのだが、床の間の壁が雨漏りしていたことで余分な仕事が出て手間を食ったのである。
 奥の寝室は座敷と違い安普請の場当たり的な仕事で済ましてあったが、こちらは本格的なきちんとした部屋にしたため、ここまで手間を食ったわけである。
 これで座敷の床を張り替えれば、次の入り口の部屋二間へと仕事は移っていく。 こちらの玄関の横の間は壁を塗り替えるだけでほぼ済むし、奥の茶の間は天井に曲がった梁などが現れてきて少しは古民家らしくなるかなぁというところである。


 今日の仕事

 笠木を造る。 二寸(6センチ)角の垂木を斜めに、台形を半分にしたような形に挽き割ったものを全部で7本造った。
 ところが一本目、二本目と失敗。 一本目などは何を考えていたのか凸と凹を逆に切り込んだものを造るという間抜けな仕事をしていた。 二本目を造ってみて、それぞれまちまちの柱の出と壁との間隔に合わせていたら全体の出の統一が取れないことに気が付き、切込みを一番浅いものに合わせていくことにする。 その場合間隔が深いものは壁との間に隙間が出来てしまう。 そのあたりは今度中塗りで砂漆喰を塗るときに塗りの厚さを変えて対応することにする。 その点は大工さんと左官屋さんが同一人物というのは融通が利いて便利だ。
 お昼からヤスと座敷の床板を剥がす。 ほとんどの釘が錆びて腐っていて、釘抜きで抜こうとすると頭だけが取れてくるという有様だった。
 バールを板の下に入れて板を起こしておいて力任せに外していく。 昔蚕を飼っていた時に、練炭を燃やしていたという炉が部屋の真ん中に切ってあってそのあたりが風通りが悪いのか特に腐っていた。 二寸五分(7・5センチ)の太い根太がしてあり、しかも材は栗だったが腐りはじめている。
 その部分は切り取って捨て、明日にでも材料を買って来て替えるとして、問題は真ん中にある炉の跡をどう始末するかだが・・・これには頭が痛い。
 出た古い廃材を軽トラに積み込むと荷台一杯分あった。 これも明日捨てに行くことにする。