釣る瓶落としの季節

 暑さ寒さも彼岸までの昔からの言い伝え通り、昨日から計ったように暑さは去り、今日などは時々小雨が降り、時雨模様とでも言えるような天気で、少々肌寒いくらいで長袖のシャツを着ている。
 昨日の夜、なんとなく寝そびれて、アルミサッシの窓のカタログを見ていた。 そのことが刺激になってしまったのか、窓枠の仕事をどうするか堂々巡りの思考をしてしまって、なかなか眠りに入っていけず、ビールを飲んだり、また起きて来て酒を飲んだりそんな馬鹿なことを朝方までしていた。

 今日の仕事


 昨日に引き続き東側の下屋の屋根葺きの仕事をした。
 昨日で垂木は桁に止めたので、断面が三角形の広小舞板を屋根の端口に取り付ける。
 材木屋から買った出来合いの広小舞だけでは4尺(1・2メートル)ほど足りなかったので、そこらにあった半柱のような材を轢き割って、急きょ造って足りない分を造って間に合わす。
 東側の下屋は南側、北側の下屋と一続きになっていて、いわゆる寄せ棟造りになっている。 それらの両側の広小舞同士と出の長さを合わすとおかしなことになってしまった。 
 垂木の出がそろわない、というか垂木の出の長さが広小舞まで届かないものが何本か出てきてしまったのだ。 それまでは一番出の短い垂木に合わせて切り取ればよいなどと簡単に考えていたのが失敗だった。
 今さら仕方ないので、広小舞より出る長いものは切り取って足りないものはそのままの状態で広小舞を垂木に止めることにした。
 広小舞が決まれば、その上に順々に下から見える側だけを鉋掛けして化粧した8寸の野地板を並べてビスて止めていった。 野地板は杉であるが、けっこう抜け節などもあって、それらの悪い板はなるべく上の大屋根に近いほうに上げて下から見上げた時に見えないようにした。 と言っても見場の問題だけで、その上に防水されたアスファルトシートを張るので雨漏りなどとは関係はないのだが・・・  
 それに目止板というものを垂木と垂木の間の隙間に挟んで止めていく。 これはまたは面倒板とも言われ、仕事が細かい割には面白みのない、まさに面倒な仕事である。
 今回の仕事の場合桁が少し曲がっているので垂木の下にカイモノをして高さを調整したので一つ一つ高さが違い、時間ばかりかかってしまうまさにコノヤロウで面倒な仕事であった。 5時を過ぎてもまだ野地板を張っていく仕事が終わらない。 どんなに仕事の進みが悪くても仕事は5時には終わるつもりにしているのだが、アスファルトシートを野地板の上にステップルで止めて今日の仕事が終わったのは6時過ぎになっていた。 明日から瓦屋が仕事に来るので、どうしても屋根下地は今日中に仕上げねばならなかったからだ。
 彼岸を過ぎると昼の長さより夜の長さのほうが長くなるので、日が暮れるのは早く、良く言われるように釣る瓶落としの此の頃である。 老眼の目にはつらい季節であるが、仕事をしているとどこからともなく金木犀の匂いがしてくる季節であるし、仕事の合間にふとまわりを見渡すとき、柿の実がオレンジ色に色づいてきている季節でもある。
 弟のヤスが帰った後、薄暗くなった今日の仕事を見ていて、垂木の長さが揃わないのは見てくれが悪いなぁと恥じ入るばかりであった。