あやしい男

 今日は左官屋も配管屋もお休みで、朝の内バキュームカーが来て、汲み取り式の便壷から糞尿を吸い取り水洗いしてくれた。 あとは便壷の底に穴をあけておいて、落とした壁土が山と積んであるのでそれを入れて埋めてしまうことになる。 また、ガスの配管屋が来てキッチンのシンクが来る前に縁の下にガスの配管を通して立ち上げてくれた。 オフは一日中外で外壁にメタル・ラスを留めていたが、お昼前後は暑いくらいでャツ一枚になってやっていた。 この暑さのあと雨が降って湿ると、桜の蕾が一気に膨らんでいよいよ開花となりそうである。


 夕方仕事が終わってから、まずPCでニュースを覗く。 その後、ああ〜疲れた〜とすぐ横のソファーで横になるのだが、そのまま毛布をかぶって寝てしまう・・・だいたい三十分ぐらい完全に眠ってしまう。  ほんの三十分ぐらいだが、眠るのと眠らないのでは大違いだ。 極端に言えばそうしないと夕食の準備をするだけの元気が出ない。 昨年はどうだったろうか?・・・こんなに疲れていたっけ・・・もう昨年のことなどすっかり忘れてしまっている・・・最近は・・・昨年の末ぐらいからだが、小さな怪我を起したり、寝汗をかいたり、歯茎が腫れたり、身体がやや疲れ気味のようである。
 一時炒めモノなどサラダ油を使った料理が食べたくなくなっていたが、ここへ来て少しずつ戻りつつある。 チャーハンや焼ソバも食べてみるかという気になり、一、二度作ったりした。 だが、一度食べるとしばらくは食べたい気にはならないみたいだ。


 今日お昼前脚立に上がって外壁にメタル・ラスを張っていると後ろから、にいちゃん、またこれ見ておいてなぁ、と声が掛かる。 振り向くと男が立っていた。 アレレ、にいちゃんじゃなかったなぁ・・・だけどいいやぁ、また来てなぁ、と笑いながら言う。 手にチラシしのようなものを一抱え持っていて、それを郵便受けなどに配って歩いているようだ。 それは良いのだが、その男の顔が問題だった。 けっして似ているという訳ではないが、その顔を見たとたんに思い浮かべたのは、あのかまやつひろしの顔だった。 髪をケバイ金髪の長髪にして、シワのある老け顔に目だけがギョロリと大きいそんな顔でニカニカ笑っているのだ。 あんな顔で、また来てなぁ・・・と言うからには・・・さてはキャバクラか、ゲイバーの宣伝をして歩いているのだろうか?・・・と不審に思ってしまった。 脚立を降りてから男が挟んで行ったチラシを見ると、子供750円、大人1500円と料金が書かれている散髪屋の宣伝チラシだった。 

 また脚立に上がって、仕事をしながら、しかし、なぁ・・・あのかまやつ顔で!散髪しているとしたら、子供だろうが、大人だろうが誰だって散髪に行くだろうか・・・とかえって心配になったが、その後、急に可笑しくなって、脚立の上でアハハ、アハハと笑いながら一人仕事をしていた。
  

 今日の仕事


 一昨日外壁のシージング・ボードの上に防水のアスファルト・ルーフィングを張ったが、今日はその上にモルタルを塗っても落ちないようにメタル・ラスをタッカーで留めていく。