至福の時

 三月に入ってから案外寒い日が続いている。 二月が暖かかったせいで、三月が例年並みの気温でも寒く感じるのかもしれない。
 仕事はやや遅れ気味だが、それなりに順調である。 当初この家には半年掛かると見ていたが、四月一杯でその半年になる。 ということは後一月と半分である。 まだキッチン、リビングそれに玄関やベランダが残っている。 最低でも一ヶ月は遅れるだろうから、仕上がりは5月一杯と設定し直した。 一人の人間が一日かかって出来ることはタカが知れている。 それでも毎日コツコツやっていると少しずつ前に進み仕上がっていく。


 この仕事を始めた頃は、仕事が終わった夕方、今日一日で自分のやった仕事をジッと眺めていたものである。 何よりもうれしいのは、自分がやった仕事が自分の目で見て確認できることであった。 それまで商売をして稼いでいたが、翌日帳簿を付けながら数字上で儲けが確認できたが、自分のやっている仕事を毎日自分の目で見て確認するということは出来なかった。 当初はそんなことがとても新鮮であった。 また、今日はここまでやったから、明日は多分ここまでやれるだろう、と目で見ながら明日の仕事を目算していた。 最近ではさすがに慣れてしまって仕事の終わりにそんなことをする習慣はなくなったが、難しい仕事をようやくクリアーした時などは、目で見ながら確認して一人で満足している。 まさにその時こそ、至福の時である。 

 ここへ来てまたリビングの設計を少し変更した。 普通人は光を目の前にして座りたいものだ、という当たり前のことに気がついた。 結果、柱を抜かなくても済むようになった。 ということは邪魔な柱がまた一本増えてしまったと言うことになるが・・・またこのプランも変更になるかもしれないが、設計は積み木崩しのように最後の最後まで迷い続けるものである。 


 今日の仕事


 トイレの壁下地をする。 プラスターボードを全体にあてて下部1メートルほどの部分に腰壁をしていく。 上下の押さえ材に溝を切り込みそこに羽目板をを並べて嵌めていくという仕事をした。 四面腰板なので全部は出来ず明日残りをする。