仕事、労働

 廊下が交差する箇所にあった邪魔な柱を一本とうとう抜いた。 この一本の柱を抜くためにまるまる今日一日かかった。
 真ん中の柱を抜く代わりにその両側の柱間に梁を渡して、上から掛かる加重をその横梁で受けておいて、さらにそれを両側の柱で支えるという訳である。
  たまたまだが今日は近所に前にこの家で座敷の下がった柱を上げるのを手伝ってもらった大工さんも仕事に来ていた。 以前ここの家の仕事を見にきていた近所の人が、それじゃと自分の家の柱も持ち上げてくれと、後でその大工さんに頼んだのだ。 今日のオフの午前中の仕事は、丸桁の下部に梁を入れるのだが丸いままでは全面で受けることにならないので、その丸桁の下部をノミでハツッていたのだ。 そんな仕事に午前中一杯掛かってやっていたのだ。 その仕事を昼の時間に来た大工さんが見て、エライことをやっちょるなぁ、と笑っていた。 丸いものの下部をノミで約二メートルほどにわたって出来るだけ水平にハツルのは、それをやったことのある者だけが大変なことだと分かるのだろう。


 午後からはジャッキで桁を持ち上げておいて、柱を切り、取り両側の柱に切り込みを入れてそこへ横から梁を入れた。
 今日はまたちょうど配管屋が仕事に入ったので、重い梁を両側の柱間に入れるのを手伝ってもらえて大変助かった。 この仕事を一人でやるとなれば大変だったのだ。
 この配管屋は稲美町という小さな町から来ているのだが、若い衆二人で仕事をしているが、この配管屋が見積もりを出すと他の業者はほぼ諦める、と言われているらしい。 それだけ見積もりが安いということだが、見ていると仕事の手順がよい、と言うことは仕事が早いと言うことなのだ。
 親方が32歳、若い衆は23歳、訊けば仕事がこの後もびっしり入っていると言う。 仕事が早いので、少々安く受けてもフルに働けば働いただけ自分達が儲かるのだ。 今日も四時ごろにここの仕事が終わったが、一足先に親方は次の現場へ行っているので、若い衆もサッと後片付けをしてそちらの現場に駆けつける。 普通チョイトした業者の従業員なら、仕事が4時に終わったらその日の仕事は終わりにしてしまうか、ダラダラと仕事をして5時ごろに終わらせるかである。 世の中ではせいを出して働けば損をする、楽をすればそれだけ得をする、という風潮が蔓延しているが、とにかくひたむきに働く彼らの仕事振りは見ていて気持ちがいい。 オフと一緒で仕事の腰を折るような午前、午後の途中の休憩など取らないのも気に入った。 休憩は人間の労力に頼ってしたいた時代には、それをしなければかえって仕事の効率が落ちるし、働く者もそれが楽しみであったという時代の名残りである。 もちろん今の時代でも、それを必要とするような仕事はあるだろうと思う。 だが現在、機械力に頼って仕事をしている大概の仕事ではあえて必要ないと考えるのだが・・・


 今日の仕事


 交差する廊下の柱を一本抜く。
 まず丸桁の下部をノミで削り取って平らにする。 抜く柱の両側の柱に六寸二分(約20センチ)幅でで五分(1・5センチ)の深さの切込みを入れる。 丸桁とそれに交差する桁の両方にジャッキを掛けて持ち上げておいて、柱の上部を丸桁のところで切る。 続いて下部も床近くで切って、柱を取り外す。 丸桁を受けているジャッキを外す。 丸桁の下の柱間に横から梁を叩いて入れて、交差する桁に掛けたジャッキも外す。 桁が下がって両側の柱間にかかった梁で丸桁の重みを支える。