縁切れ

 昨日に引き続き和室の床張りをする。 昨日は四部屋の内二部屋の床を張ったのだが、その繫ぎの部分も板をはめ込み、あたかも続き部屋のフローリングを張ったような状態になった。 墨出しが良かったからというか、大引きや根太をきれいに伏せたからというか、アバウトなオフの仕事としてはハナマル的な仕事となった。
 裏の家の年寄り奥さんが白菜の漬物と大根を持って来てくれて、きれいに張ってあるし丈夫そうだわ仕事も早かったしウチも張ってもらおうか、と言う。 最初外交辞令だと思っていたが話していくとどうも本気らしいと分かってくる。 あわてて、俺は請負っての仕事をしないんだよ、とやんわりと断っておいた。
 ここの家の前の持ち主の本家スジの爺さんという人が毎日のように仕事を覗きにくるが、3,4日前に来た時隣の隣の家では襖や障子が建て付けが悪く傾いて閉まらないと言っている。 お前行って柱を持ち上げて直してやらんか、と言っていた。 そんな言い方をする人かもしれないが、その言い方がかなり横柄で嫌な感じを受けた。 建付けが悪いのは柱が下がっただけでなく、柱が傾いているのだから、そう簡単にはいかないよ、とこちらもやんわり断っておいた。
 前の綾部と違って、毎日数人誰か仕事を覗きに来る。 向かいのオッサンなどは毎朝顔を出しては、30分ほど話し込んでいく。
 オッサンが言うには倒産したここの家の前の持ち主は、すぐ近所に家を借りて住んでいるらしい。 もう年は75歳ぐらいということだが・・・
 パンクする前になぁ、嫁さんに預金通帳と現金を全部渡して四国の実家へ帰して離縁したと言っているが、あれは逃げて行ったのだぜ、と言って笑う。 オフが、やれやれ、金の切れ目が縁の切れ目か、と言うと、そうそうそう、それ、それ、それよ、と嬉しそうに笑っていた。
 その笑い顔がなんと表現してよいか・・・憐れみながら莫迦にしたような、それでいて少し困ったような・・・男同士でなければ分かり合えないような微妙なものが含まれていた。 


 今日の仕事



 今日も残りの二部屋に根太をビス止めしてからその上に床板を張っていった。 床の上で屈んで仕事をすると腰が痛くなるので、今日は根太の間の地べたに下りて仕事をした。 こうすればたしかに腰は痛くならないが、今度は床に上がったり下りたりの繰り返しで足がかなり疲れる。 五時に仕事をあがったが、疲れ果てていて一時間ほどソファーで眠ってしまった。
 部屋と部屋の繫ぎ目、つまり敷居が入る下の部分に二枚の板を張れば終わりとなる。 上に入る四本ある敷居だが、その内一本はどうやら使いものになりそうもない。 明日はその仕事をして和室の大工仕事は終わるだろう。