便所の電灯

 神戸から帰った。
 今回も神戸では見たいのがやっていないので映画も行かず、ソファーに寝転がって衛星放送などを見て過ごした。
 昔の映画でが「炎のランナー」を今頃やっと観た。
 話は1930年代頃のオリンピック大会でのアスリートの話だが、背後に人種問題がさまざまな形で見え隠れする。 また主人公はユダヤ系のイギリス人で熱心なユダヤ教徒である。 ユダヤ教の戒律では安息日、つまり日曜日に生産的なことをするなとあるのだが、予選の日が日曜日にぶつかりオリンピック出場をあきらめるのだが・・・
 今の時代こんな内容の映画を観ると、なんとも時代がかった話で少々しらけてしまうが、しかしこの映画が作られたのは今からせいぜい二十数年前である。 この二十数年間に自分の意識もずいぶん変わってしまった。 それはここに描かれている信仰の悩みなどが、まったく大時代がかったこっけいな話に思えてしまうことに端的に現れている。
 
  
 途中、丹南篠山口インターで高速を下りて大型ホームセンターで買い物をする。  リビングの壁は大壁なので壁面下部に取り付ける巾木を買う。
 自分の家なら巾木は自分で木で造ったものにするだろうが、今回は少し体裁を考えた。 それに換気扇用の150パイのアルミのダクトとダクトカバーも買う。 ここの大型ホームセンターはオフの知る限りでもっとも大きく、建築部材の品揃えが充実している。 近ければどんどん利用するのだろうが、綾部からは車で一時間あまりかかるので気軽に来るという訳にはいかない。


 神戸に行く日に取り付けた便所のブラケットが少し傾いて付いている。 
 じつはこれは意識的にやったことである。 昔、オフが小学校時代を過ごした家の便所の電気が少し傾いて付いていた。 それが子供心に不思議でたまらならなく、いつも便所に入るたび気になっていた。
 ひと昔前、滝田ゆうという漫画家がいてガロという月刊漫画誌に「寺島町奇譚」を書いていたが、その漫画に傾いた電灯が出てきて、急に昔の家の便所を懐かしく思い出したことがあった。 その思い出があり、電灯だけでなく傾いて付いて付いているものを見ると、ついつい昔の便所のことを思い出す。 これが昔の家の便所の電灯が真直ぐ付いていたら、誰が昔の便所のことなど思い出すだろう。 便所の電灯といわないが、家のなかには傾いて付いているようなおかしなモノがひとつぐらいあってよいと思うのだが・・・どうなんだろう?・・・