雪、ああ、雪

 元旦に昼ごろに田舎へ向かい、今日3日のやはり昼ごろ田舎を後にした。 田舎にはもう一日居るつもりでいたが、山間部を中心に大雪になるという予報が出ていたので、一日早く後にした。 着いた元旦の日は時間が夕方だったこともあり、自宅をザット見て、すぐ山の家へ向かった。
 一茶ではないが<これがまあ 終の棲家か 雪五尺>の世界だった。 怖いと思ったのは、大屋根の雪が巻いていることである。 つまり庇の先へ渦巻くようになってせり出しているのである。 普通なら雪自体の重みで落ちるところだが、下部が凍っているので落ちない。
 この過重な重みで屋根垂木が折れるのである。 それを防ぐために家にもいろいろ工夫されている。 一番簡単なのは垂木を太く大きいものにするのである、中には4寸や5寸(12センチや15センチ)角の垂木さえある。 それに出し桁というのもある。 本来桁は建物の壁面の上部にあって棟から下がってくる垂木を受けているのだが、そのさらに外側にもう一本桁を横に渡して垂木を受けて雪の重みで簡単に折れないようにしている構造である。 その渡した出し桁を外へ伸ばした梁で受けていたり、柱から腕木というものを出してそれで受けたりしたいる。 まさに雪国の工夫であるが、こういう構造をしているのは一般に大きくて立派な家が多い。

 元日の夜は山の家で寝たのだが、その先に見た屋根雪の状態が頭から離れなくて熟睡できなかった。 それに夜中に氷のかけらが落ちたりする音がしても、垂木が折れたのではないかとビクつく始末である。 二日の朝はまだ暗い内から起きて屋根に上がる準備をした。 中綿の入ったナイロンヤッケとズボンをはいて長靴には滑り止めに縄を巻いて縛り、ゴム手袋をして梯子を掛けてスコップを持ち、雪がずり落ち何もない下屋に上がる。
 スコップで大屋根から巻きながらせり出した雪棚を切っていくのである。 雪棚は下部が凍っているのでなかなか切れない何度も何度もスコップを突き刺して雪を切り落とす。 上手くまとまって落ちると下屋が揺れるほど雪は重い。 二時間ほど掛かったが全部切り落として梯子を降りるが、登る時は一時も早く落とさなければと思い必死だったが、降りるときになって高所恐怖症が出て怖い思いをした。 家の裏と横に立ち上がっている煙突は共にせり出した雪に押されて曲がったり折れたりしてしまっている。 下の家は雪下ろしは終わっていたが、垂木が折れていて屋根の前部が瓦を乗せたままだらりとおじぎしている状態であった。 こんな状態の屋根で雪下ろしをした人達は怖かっただろうと思う。
 午後から自宅へ行き、周りを見てまわる。 夏に単管で枠を組んで作ったアケビ棚は雪の重みで真ん中の垂木が折れていた。 井桁に組んだ隙間が1メートルほどあるのに、雪がくっ付いて隙間から落ちないでその重みで垂木が折れたのである。 雪国には緑陰を楽しむ棚モノは向かないようだ、雪が消えたら撤去してしまうつもりである。 それにこれは雪囲いをした時分かっていたのだが、一部の木が腐ってきていて折れたいた。 それを補強するために雪を堀、そこに応急で2×4の材を縦横に渡し古い板戸があったのでそれを当てておいた。
 くたくたのなって山の家へ帰ると、お宮さんの長い部材置きの倉庫が雪で倒壊していた。 朝のうち少し傾いていたようだなぁと思ったが、スパンが短い建物だから大丈夫と思っていたが、雪の重みはものすごいものがあると、あらためて見せ付けられたような気がした。