神戸で

 30日の夜、神戸の北野の異人館通りにあるスペイン料理店でフラメンコショウを見る。
 フラメンコというのはもともとが貧しいジプシーの踊りで、内部にある虐げられた激情を踊りに仕上げたような、世界中にある踊りの中でももっとも激しい動きする気迫の踊りである。 会場のスペイン料理店に飾られていた一枚の写真、名前は知らないが多分外国人の有名な踊り子の表情は気迫迫るものがあった。 その日の主催者である大木ユリさんの弟子の踊りの足元を見る表情も、横から見ていて恐ろしいくらいであった。
 もし来年も生きていたらまた皆さんの前で踊りを披露したい、という彼女の語り口は静かだったが、彼女の身体のことを考えると少し痛々しいものがあった。
 
 翌日の31日は終日ソファーの上でうつうつと寝てばかりいた。 この間休みなしに働いていたのと、田舎や神戸へ連日車で移動した疲れが出たのだろうと思う。 

 そして今日から11月、神戸は朝から雲一つない快晴だった。 急きょ嫁さんも一緒に綾部までドライブして電車で帰ってくると言い出す。 そこで彼女を乗せて高速を北へ走る。 途中舞鶴自動車道の春日インターで降り、ネットで調べた物件のある部落へ行くが、今回は不動産屋の案内を請わないで行ったので、物件のあり場所が分からない。 結局四件廻ったがお目当ての家を見つけたのは福知山での一軒だけ。
 そこの古民家はかなり古いもので大きくないが、田舎の農家にしてはしっかりした良い造りをしてあった。 だが痛みようも激しい。 値段の980万は田んぼを含め平地の敷地が700坪近くあることを考えれば決して高くないが、オフのように家が欲しくて土地はいらないという人にとっては、皮肉なものでこの値段は高い。 と言うのはこの家を再生させるには、かなりのお金がかかりそうであるからだ。
 ここは土地だけの値段と見て、家などいらないという人向けだ。

 途中買い物して綾部の家に着いたのがもう2時近くになっていて、部屋を掃除して、綾部温泉へ行って来るともう4時過ぎで、彼女が帰る時間になっていた。